実践リスクマネジメント要覧 理論と事例
企業を取り巻く様々なリスクおよび対応策について、MS&ADインターリスク総研が総力をあげてまとめた一冊です。業種・業界を問わず、企業・組織のリスクマネジメント推進において参考となる一冊です。
「実践リスクマネジメント要覧」の購入はこちら
雷は、発生メカニズムによっていくつかの種類に分けることができる。雷の基本的な発生メカニズムは、気温の低い上空に上昇した雲の中で、氷晶がぶつかり合って帯電し、蓄積された電気エネルギーが大気中に放電される現象である。空気は良絶縁体とされているが、大きな電気エネルギーによって高い電圧が発生すると絶縁破壊を起こして導電状態となる。雷雲に蓄積された電気エネルギーが、地上の物体に対して放電(対地放電)する現象が落雷である。
雷の分類にはいくつかの方法があるが、気象条件の違いにより分類される次の3種類が代表的なものである。
日中の太陽光によって暖められた空気が上昇気流となり、これによって発生した積乱雲の中で氷晶がぶつかり合って帯電し、蓄積された電気エネルギーが雷の発生源となる。多くの場合、雲の上層部には正に帯電した電荷が蓄積され、地表側には負に帯電した電荷が蓄積される。したがって、対地放電が起きて落雷となった場合、負の極性の雷となることが多い。夏の気温が高く、日差しの強い日に発生しやすく、夏季雷とも呼ばれている。地上の表面の空気が暖められ、上空に冷たい空気がある状態、すなわち大気が不安定な状態となった時に多く発生する。
低気圧の周囲に発達した前線付近の上昇気流によって雲が発生し、その雲の中で帯電によるエネルギーの蓄積が起こり、雷が発生する現象である。寒冷前線後方の寒気が移動することによって、居座っていた暖気が上に押し上げられて雲が発生する場合が多いが、温暖前線面で、暖気が寒気の上に乗りあがって雲が発生する場合もある。勢力の強い低気圧の移動などによって前線が発達するとこのような気象条件になりやすい。前線による影響は、広範囲に及ぶことが多く、比較的広域にわたって雷が発生することや前線の移動に伴って雷雲も移動することが特徴といえる。
冬季、日本海にシベリアから寒冷な北西の季節風が吹き、暖流である対馬海流上で下層が暖かく湿った空気となり対流雲となって発達し、対流雲の中の氷晶がぶつかり合って帯電が起こる。上空に正の電荷を帯びた雲が発生するが、北西風によって上空の帯電した雲が陸地に押し出され雷雲となる。このようにして発生する雷は冬季雷と呼ばれており、負の極性の雷が発生することがあるが、正の極性の雷が発生する割合が熱雷(夏季雷)などと比較すると高い。また、熱雷などと比較して、1回当たりに放電される雷のエネルギーが大きいことが特徴である。
冬季雷は日本海側に多く発生し、秋田県から福井県にかけて特に多い。