実践リスクマネジメント要覧 理論と事例
企業を取り巻く様々なリスクおよび対応策について、MS&ADインターリスク総研が総力をあげてまとめた一冊です。業種・業界を問わず、企業・組織のリスクマネジメント推進において参考となる一冊です。
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生物多様性は、地球上に生息している生物が多種多様であること、そしてそれらがお互いにつながって存在していることを表した概念である。生物多様性は人間活動の影響を大きく受けるため、現在の危機的状況は、過去の人間と自然の関わりの結果を表すものである。
一方、生物多様性は、生態系サービスと呼ばれる自然の恵みを人間に無償で与えている。すなわち、人間活動によって生物多様性が失われていくことは、清浄な空気や水、豊富な食糧や快適な気候などが劣化し、野生生物のみならず、人間の生活環境の悪化として跳ね返ってくることにつながる。
したがって、生物多様性の危機は、企業の持続可能性も脅かすリスクなのである。このため、企業はビジネスと生物多様性の関係を把握し、そのリスクに対応し、ビジネスの方法を変えていく必要がある。
生物多様性は社会経済に様々な便益(生態系サービス)を提供している(図表1)。それはストック(預金)とフロー(利子)のような関係であり、ストックである生物多様性が損なわれれば、生態系サービスも劣化する。近年では、生物多様性に限らず、それ以外の自然環境(大気、土壌、地質など)を含めた自然のストック全体を「自然資本」と呼ぶことも多い。しかしながら、その価値は十分に認識されていないために、生物多様性の損失を招く意思決定がなされている。