実践リスクマネジメント要覧 理論と事例
企業を取り巻く様々なリスクおよび対応策について、MS&ADインターリスク総研が総力をあげてまとめた一冊です。業種・業界を問わず、企業・組織のリスクマネジメント推進において参考となる一冊です。
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事業継続マネジメント(Business Continuity Management:BCM)とは、事故や災害などによる事業中断が、自社や取引先などの利害関係者に与える影響を小さくできるよう、組織としての対応力を高め、維持するための活動全般をいう。
例えば製造業であれば、工場が災害や事故などによって操業できなくなり、製品を製造・出荷できなくなると、売上げが減少するだけでなく、納品先の業務が滞ったり、原材料のサプライヤへの発注が減ることによってサプライヤの収益減少を招いたりする。また自社の収益が大幅に悪化すれば、株主の配当が減る可能性もあるし、資金繰りが回らなくなれば倒産もあり得る。このように様々な方面に発生する悪影響を抑えるためには、ほかの工場や他企業で代わりに生産するなど、何らかの代替手段を準備し、それを実行するための段取りを決め、実行可能かどうかを確認・検証するなど、様々な活動が必要になる。このような一連の活動の総称がBCMである。
そして、このような活動のなかで作成される成果物の1つが、事業継続計画(BusinessContinuity Plan:BCP)である。これは災害や事故などによって事業活動が中断してしまうことを想定し、そこから事業活動を再開させ、継続させるための計画をあらかじめ文書化したものである。日本においては、政府や自治体など非営利組織におけるBCPを「業務継続計画」と呼ぶことがあるが、言葉の意味は同じである。BCMに関する一連の活動は、図表1の「BCMライフサイクル」の形に整理できる。ここではまずBCMの活動全体を俯瞰するために、BCMライフサイクルの各段階でどのようなことを行うのかを説明する。