コラム/トピックス

企業のカーボンニュートラル取り組みの考え方 ~GHG算定のプロセス

[このコラムを書いたコンサルタント]

本間 基照
専門領域
BCP/BCM(事業継続マネジメント、自然災害、新型コロナ・新型インフルエンザ等の感染症対策
役職名
リスクマネジメント本部 リスクマネジメント第一部 リスクエンジニアリング第二グループ グループ長 マネジャー・上席コンサルタント
執筆者名
本間 基照 Motomitsu Honma

2024.3.18

中小企業に広がりつつあるカーボンニュートラルの取り組み

現在、大企業が中心となりカーボンニュートラルへの取り組みが推進されていますが、その対象が中小企業に広がりつつあります。例えば、取引先企業がSBTを設定した場合には、そのサプライチェーンに含まれる企業に対して何らかの形で脱炭素取り組みを求めてきます。

またそれが取引条件にもなる可能性もあります。実際、海外では、製品の製造における電力も100%再エネを目指し、サプライチェーンに対し再エネの利用を要請している企業、カーボンニュートラルの取組みを行わないサプライヤーは除外する企業もあります。

企業のカーボンニュートラル取り組みの考え方 ~削減目標の設定と検討~

基本的な企業のカーボンニュートラルへの取り組みフローは、①現状把握、②削減目標の設定、③削減目標の検討、④削減行動となります。

  1. 現状把握
    現状把握について、カーボンニュートラルを実行するにあたり、第一に事業者の排出量の現状を把握する必要があります。我が国では現在、事業者は全体のエネルギー使用量(原油換算値)が1,500kl/年以上でかつ特定事業者等に認定された事業者は、年度毎のエネルギー使用量を届けなければなりません。そのことから比較的大規模な事業者は既にエネルギー使用量からCO2排出量を把握していると考えられます。

    一方で、上記の規模以下の事業者は現状を把握していない場合が多いといわれています。削減行動の実施のために、まずは自社の排出量の計測・把握から行う必要があります。CO2の排出量の計算方法は、CO2排出量=活動量(生産量・使用量・焼却量)×排出係数で表されます。

  2. 削減目標の設定
    削減目標の設定について、算定されたCO2排出量を基に、カーボンニュートラル達成のために必要な削減量を概算し目標を設定します。政府は2020年4月、2013年のエネルギー起源CO2排出量12.35億トンから、2030年には約5.75億トン、2050年に0に削減するというロードマップを描きました。これは産業、業務、家庭、運輸、転換などの各セクターに対し、具体的な削減が割り振られています。またこれらの削減は、1.5℃目標に整合性があってはじめて有効となります。

  3. 削減目標の検討
    削減目標の検討について、削減目標が決まったら、具体的な達成手段を考えます。まずは省エネで、いかに現状のエネルギー使用量を抑えられるかを検討します。我が国では1970年のオイルショック以来省エネの法制度化が進み、具体的な省エネの手法も確立していわば“雑巾を絞った”状況ともいわれていますが、セクター別にはまだまだ見直せるものや、取り組みが遅れている領域も多く、省エネは一層の努力が求められます。

    次に、再生可能エネルギーによる取り組みです。太陽光発電、風力発電などの再生可能エネルギーによる自家発電をすることで、外部から購入する電力量を削減します。別の方法としては、化石燃料によって発電された従来の電量会社との契約を切り替え、小売発電事業者が提供する再エネ電力メニュー等を購入することなどが挙げられます。

    一方グリーン電力証書や再エネ電力由来Jクレジット等による方法もあります。企業は現状の電力契約はそのままで、環境価値のみを電力証書という形で購入し、再生可能エネルギーを使用したものとして相殺する方法です。また削減しきれない量を、吸収・固定により削減とみなす方法もあります。植林や森林管理による吸収固定有効利用(CCU)、地下貯留(CCUS)などの新たな技術を組み合わせ、目標達成することが求められています。

  4. 削減行動
    削減行動について、削減目標、削減方法が決まったら、削減行動を計画、実施、結果検討、計画修正などのPDCAサイクルを回して組織的に管理をして、透明性のある仕組みにおいて目標達成の進捗管理を行っていく必要があります。

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