コラム/トピックス

防災・減災シリーズ(火災・爆発リスク):火災リスクを考える②

[このコラムを書いたコンサルタント]

関口 祐輔
専門領域
安全文化醸成、安全管理全般、災害リスク関連の体制強化・支援に強み
役職名
リスクマネジメント本部 リスクマネジメント第一部長 主席コンサルタント
執筆者名
関口 祐輔 Yusuke Sekiguchi

2024.3.19

ヒューマンエラーを防止する

工場の火災事故を分析すると、従業員の操作ミスにより出火しているケースが散見されます。そのため、操作ミスを起こしにくくするようなヒューマンエラー防止対策が重要といえます。ヒューマンエラー防止対策の一例として、電熱器は消し忘れによる事故が多くみられる器具であることから、器具自体を人目につきやすい場所に固定し、さらに使用状態が一目でわかるようにパイロットランプを設置するなどの対策が挙げられます。

近年では、設備装置が自動化され、各種作業がゲージの読取りや押ボタンの操作のみによる場合が多くなっています。このような環境では、本来危険な作業に従事している場合でも、各種操作を安易に行ってしまう傾向が生じやすいものであり、作業に潜む危険性の認識不足による事故が多発しています。したがって、操作の確実性を期するため、行動を起こす前の手順・確認が一目でわかるような表示をしたり、押ボタン、バルブ、配管、計器類などの色や大きさを変えるなど、誤りを起こしにくいように配慮することが必要です。例えば、計器類では管理範囲の色による明確な表示、聴覚に訴える音響設備の併設などの対策があります。

消火対策のポイント

「消火は最初の3分間」がポイントといわれるように、火災の早期発見と初期消火は防火上非常に重要です。消防火設備の適切な管理と定期的な保守・点検に加え、万一の場合、落ち着いて行動できるよう日頃からの訓練が大切です。

消火設備の設置・管理に関しては、消防法に従って行われますが、消防法は、人命の確保を主眼としているため、財物の安全を保障するものではありません。そのため、消防法を遵守することは、最低限の対策と位置付け、さらに業種、業態、規模に応じて適切な消火対策を遂行していくことが望まれます。

  1. 火災の早期発見
    「小火のうちに消し止める」ことが消火対策の原則です。このためには、自動火災報知設備を構内全域に設置し、さらに出火源となりやすい作業設備については設備自体に出火を感知する装置を組み込むなど、火災の早期発見に努めることが必要となります。例えばフードで覆われた機械類では、フード内部やフードにつながるダクトの内部などへの空気の流れを十分加味し、火災感知器や温度監視装置を設置することが重要なポイントとなります。夜間作業員が無人となる倉庫などは、火災の発見が遅れる危険性があるため、特に優先して自動火災報知設備を設置することが望まれます。
  2. 各消火設備の位置表示
    消火器や屋内消火栓のような手動消火設備の場合、火災発生を早期覚知できても消火設備の設置場所がすぐにわからず、使用に時間を要すケースが想定されます。そのため、あらかじめ各職場の従業員にこれらの消火設備がどこに設置されているか周知しておくだけでなく、万一の火災時に平常心を失ってもすぐにわかるよう、明瞭な位置表示をしておくことが望まれます。また、消火設備の位置表示がなされていても、周囲に物が置かれているため、即座に使用できない状況になっていることがある。この事態を防止するため、消火器や消火栓の設置場所周辺には、物品等を保管することを禁止する表示が重要です。
  3. 各消火設備の定期点検
    消火設備の管理が不十分であると、万一の火災時に使用することができません。実際に、火災時に消火設備が有効に機能しなかったために大火災に至ったケースも少なくありません。消火設備は頻繁に使用される設備ではないため維持管理が後回しになりがちですが、定期点検による機能維持の確認と不具合箇所の早期修繕が重要です。
  4. 消火訓練の実施
    消火器や消火栓などの手動消火設備については管理が適切に行われていても、従業員がその操作に慣れていないと、万一の火災時に操作に手間取り、消火に失敗する可能性があります。そのため、年2回以上消火訓練を実施することが重要です。
  5. 消火の自動化
    最近の工場は自動化が進み、構内の人手は減少の方向にあり、消火作業に従事できる人手も減少しています。また、機械の種類や取り扱われる物質によっては、急激な火災の拡大や爆発の危険、さらに濃煙や毒性ガスの発生なども想定しなければなりません。手動の消火設備は人が操作しなければならないため、万一の火災時に操作要員の精神的な負担や、安全確保のため有効な消火活動が行えないケースが想定されます。

以上のことから、消火設備は可能な限り、スプリンクラー設備や泡ヘッド設備等の自動消火装置とすることが望まれます。

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