コンサルタントコラム

シリコンバレーにおけるサステナビリティ取り組みの最新トレンド

[このコラムを書いたコンサルタント]

専門領域
・新技術の調査
・プロジェクトマネジメント
役職名
プロダクト開発部 上席コンサルタント(シリコンバレー駐在)
執筆者名
野中 聡 Satoshi Nonaka

2023.3.31

気候変動による自然災害発生リスクは世界経済フォーラムが発表するグローバルリスクにおいても、短期(今後2年間)で2位、長期(今後10年間)で3位と上位に位置づけられ、大きな問題になっているが、私が住んでいるシリコンバレー地域においてもその切実さを感じることが少なくない。当地は一年を通じて乾燥した気候であるため、夏になると山火事が頻繁に発生する。一度山火事が発生すれば、大量の二酸化炭素が排出され、さらに気候変動が加速するという悪循環が生まれてしまう。

元々シリコンバレーの住民はサステナビリティへの関心が高いと言われていたが、そのような背景もあり、個人も企業もサステナビリティに対する取り組みが盛んになっていると感じることが増えている。

まず、シリコンバレーでは電気自動車が数多く走っている。個人的な印象では街中を走っている車の3割程度が電気自動車である。スーパーマーケットやマンションの駐車場など、あらゆるところに充電スタンドが設置されているため、充電には困らない。電気自動車というとTeslaが有名だが、こちらではTeslaだけでなく、新興の電気自動車メーカー(Lucid、Rivian、Vinfastなど)も増えてきた。特にLucidの電気自動車は内外装が高級仕様になっており、シリコンバレーの富裕層から人気だと聞く。以前はシリコンバレーで成功した人=高級車に乗るというイメージだったが、最近はそれが電気自動車に置き換わっているらしい。

また、こちらでは環境に配慮したファッション製品に人気が集まりやすい。例えば「Allbirds(オールバーズ)」という靴ブランドをご存知だろうか。履き心地の良さはもちろんのこと、環境に配慮した素材や製造工程をアピールしており、現在シリコンバレーで大人気となっている。ホームページを見ると、一番初めのページに気候変動への取り組みについて記載するほどの力の入れようだ。このように個人によるサステナビリティ取り組みが盛んであることから、企業も同様の取り組みをアピールするケースが増えている。

昨年9月、米アップル社が新製品の発表会を行ったが、その際にサステナビリティ取り組みを強調していたことが印象的であった。例えば、新型AirPods proの特徴をひととおり説明した後、全てのマグネット部品に100%リサイクルされた希土類元素(レアアース)を使用していることに加え、パッケージからプラスチック素材を取り除いたことをアピールしていた。

また、今年1月にラスベガスで開催されたCES2023(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)では、韓国サムスン社が自社の新製品はもちろんのこと、展示ブースの素材にまでリサイクル部品を使っていることをアピールしていた。

サステナビリティ取り組みというと、以前は特に投資家向けに実施・情報開示していることが多かったが、最近では企業が取り組むべき社会的責任の範囲が広がり、サステナビリティに対する意識も高まっていることから、投資家だけでなく、全てのステークホルダーにアピールすることが重要視されるようになった。

このようにサステナビリティ取り組みを企業のブランディングに活かす運動は、今後より一層広まることから、その情報開示を適切に行わないことは、企業にとって事業リスクとなってきている。

以上

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