
第8号 「高年齢労働者の労働災害防止対策」
2013.1.1
1. はじめに
「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(高年齢者雇用安定法)の一部が改正され、平成25年4月1日から施行されます。これは平成25年度から厚生年金(報酬比例部分)の支給開始年齢が段階的に引き上げられることに対応するためです。
今回の改正により、事業主が労使協定により定める基準に基づき、継続雇用制度の対象となる高年齢者を限定できる仕組みが廃止となり、事業主は希望者全員を定年後も65歳まで雇用する義務を負うことになりました。
したがって、高年齢労働者が増えることになりますが、国は「70歳まで働ける企業」の普及・啓発に取り組んでいますので、この傾向は今後ますます強まるものと思われます。本稿では、高年齢労働者の労働災害の防止対策について考えます。
2. 労働災害発生状況
高年齢労働者の労働災害発生状況をみますと、厚生労働省の平成23年度のデータでは、50歳以上の死傷者数は全死傷者の44.4%、死亡者では53.9%を占めています(図表2、3参照)。総務省統計局が公表している労働力調査によれば、平成22年の労働力人口(15歳以上人口のうち、就業者と完全失業者を合わせた人口)6,261万人のうち50歳以上は2,380万人、割合は38.0%ですので、50歳以上の高年齢労働者の労働災害発生率は高いといえます。
事故の型としては、加齢に伴う心身機能の低下から、「転倒」、「墜落・転落」が多く、若年労働者に比べて被災した場合に休業日数が長期化する傾向があります。
以下、高年齢者の安全および健康管理を検討するにあたり、まず加齢に伴う心身機能の変化を考え、その後にこれらに応じた労働災害防止対策についてご説明します。
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