レポート/資料

2013年度 No.5 「在中国の各種邦人犯罪について」

2013.9.1

はじめに

図1は 2009~2011年にかけてアジア地域で発生した邦人による犯罪の累計件数を表したものです。そのうち、企業の管理不備等によって起こりがちな「出入国・査証関係犯罪」や、行き過ぎた接待や海外生活の開放感等によって起こりがちな「売買春」は、「傷害・暴行」、「麻薬」、「詐欺」等に比べ、より一層留意が必要な違法行為と言えます。また、これらの犯罪を引き起こした企業はコンプライアンス上問題のある組織だとのレッテルを貼られ、風評等への悪影響が及ぶ可能性も十分に想定されます。そこで本稿では「出入国・査証関係犯罪」、「売買春」のリスクについて解説します。また罰則の中でもイメージのわきにくい拘留所の実態をあわせて紹介します。

1. 出入国・査証関係犯罪

1.1不法滞在・不法就労・不法雇用の背景

不法滞在については、故意の場合を除き、管理不備等によるオーバーステイが主な原因と考えられます。人事部が外国人従業員のビザ・パスポート等を一括管理しているケース、あるいは各人で管理しているケース等、企業によって管理方法は異なりますが、失念、誤解といった人的ミスを完全に回避することは困難です。当局からの更新通知がないこと、更新手続の申請時期が早すぎると受理されないことなども人的ミスを招く原因となっています。

不法就労・不法雇用については、人事部等の体制が十分でない小規模企業等で散見され、就労ビザ取得の難しさがその理由として挙げられます。巨大市場として期待される中国において人材確保は重要な経営課題と言えますが、特に北京や上海といった大都市では就労ビザ取得に係わる規定運用が厳格化しており、職歴や経験のない求職者等に就労ビザが発行されないケースが増えています。就労ビザの取得条件を満たす人材を雇おうとしても、小規模企業等では人材が集まらない場合も多く、やむなく就労ビザを取得せず、不法に雇用を行うケースが見受けられます。

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