コンサルタントコラム

カーボンニュートラルと企業の取り組み~パリ協定と1.5℃目標

[このコラムを書いたコンサルタント]

本間 基照
専門領域
BCP/BCM(事業継続マネジメント、自然災害、新型コロナ・新型インフルエンザ等の感染症対策
役職名
リスクマネジメント本部 リスクマネジメント第一部 リスクエンジニアリング第二グループ グループ長 マネジャー・上席コンサルタント
執筆者名
本間 基照 Motomitsu Honma

2024.4.3

パリ協定と1.5℃目標、カーボンニュートラルの関係性

地球温暖化による影響が顕在化する中、2015年の国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)において、「地球の平均気温上昇を産業革命前に比べ2℃より十分低く抑える。できれば1.5℃に抑える努力をする」という「パリ協定」が採択されました。気温の上昇を1.5℃や2℃未満に抑えるためには、温暖化の原因とされるCO2などの温室効果ガスの削減が必要となります。

気候変動の緩和策を一切行わないというシナリオの場合にはCO2排出量は増加の一途をたどり21世紀末には4℃程上昇することになります。各国が掲げる緩和目標、政策をすべて実現した場合で3℃上昇の水準となります。パリ協定が掲げる目標は21世紀中盤以降に排出量をネガティブにする経路となります。これは排出量をゼロにするだけでなく、既に大気中に放出されたガスを回収、除去することを意味します。2℃未満、1.5℃の排出経路でCO2をゼロ(カーボンニュートラル)とする時期が、それぞれ2060年後半、2050年となります。わずか0.5℃ですが取り組み速度の差はかなり大きくなります。

日本政府のGHG削減目標、エネルギー基本計画案、グリーン成長戦略案

日本では、2020年10月、菅総理(当時)の所信表明演説において、「2050年カーボンニュートラル」を目指すことが宣言されました。2021年4月の地球温暖化対策推進本部では、その中間目標を「2030年までに2013年比46%削減」とし、さらに「50%削減の高みに向けて挑戦する」ことが発表されました。

そして2050年カーボンニュートラル実現のための産業政策「グリーン成長戦略」では、温暖化対策はコスト増や成長の制約ではなく、成長の機会となるとし、カーボンニュートラルのためのイノベーションに対する税制優遇、助成金、規制改革などが打ち出されています。また2021年7月、エネルギー需給に関する基本方針となる「エネルギー基本計画」改正案が発表されました。2050年カーボンニュートラルを踏まえ、2030年には化石燃料由来を半減し、再生可能エネルギーを現行の22~24%から36~38%へ引き上げるとしています。

2021年5月、温暖化防止を目的とする法律「地球温暖化対策推進法(以下、温対法)」が改正され、「2050年カーボンニュートラル」が明記されました。温対法は企業のみならず自治体も対象であり、GHG排出抑制のための総合的な計画・施策の策定、および実施が求められています。その第一歩として、自治体の多くが2050年にCO2ネットゼロを目指す「2050年ゼロカーボンシティ」を表明しています。

企業にとってのカーボンニュートラルの考え方

日本をはじめ世界では2050年カーボンニュートラルが標準化し、ビジネスを行う上ではカーボンニュートラル取り組みは避けて通れません。取り組みを進める際には、SBTやRE100、EP100などの既存のカーボンニュートラルの枠組みを活用することが望まれます。

SBTとはScience Based Targetsの略で、科学に基づいたGHG削減目標のことを言い、パリ協定で求められている1.5℃や2℃未満水準(カーボンニュートラル)となる削減目標の設定と、取り組みが求められる。RE100(Renewable Energy 100%の略)は、自社事業運営の電力を100%再エネにすること、EP100(Energy Productivity 100%の略)は、事業のエネルギー効率を倍増させることを目標とするものです。いずれも国際的に認められているイニシアチブであるため、GHG削減を積極的に取り組むことを示す世界共通言語とも言えます。

なおSBTの対象範囲はScope1・2・3、要はサプライチェーン全体での削減目標の設定が必要になります。ただし、Scope3が全排出量の40%未満の場合はScope3の目標は不要です。また中小企業はScope3の算定は任意です。Scope1とは自社の事業活動に伴うGHG排出量、Scope2は購入した電気、熱、蒸気の使用に伴う排出量、Scope3は調達、輸送、製品の使用、廃棄などに伴う排出量を指します。

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