コラム/トピックス

カーボンニュートラルと企業の取り組み~パリ協定と1.5℃目標

[このコラムを書いたコンサルタント]

本間 基照
専門領域
BCP/BCM(事業継続マネジメント、自然災害、新型コロナ・新型インフルエンザ等の感染症対策
役職名
リスクマネジメント本部 リスクマネジメント第一部 リスクエンジニアリング第二グループ グループ長 マネジャー・上席コンサルタント
執筆者名
本間 基照 Motomitsu Honma

2024.3.18

パリ協定と1.5℃目標、カーボンニュートラルの関係性

地球温暖化による影響が顕在化する中、2015年の国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)において、「地球の平均気温上昇を産業革命前に比べ2℃より十分低く抑える。できれば1.5℃に抑える努力をする」という「パリ協定」が採択されました。気温の上昇を1.5℃や2℃未満に抑えるためには、温暖化の原因とされるCO2などの温室効果ガスの削減が必要となります。

気候変動の緩和策を一切行わないというシナリオの場合にはCO2排出量は増加の一途をたどり21世紀末には4℃程上昇することになります。各国が掲げる緩和目標、政策をすべて実現した場合で3℃上昇の水準となります。パリ協定が掲げる目標は21世紀中盤以降に排出量をネガティブにする経路となります。これは排出量をゼロにするだけでなく、既に大気中に放出されたガスを回収、除去することを意味します。2℃未満、1.5℃の排出経路でCO2をゼロ(カーボンニュートラル)とする時期が、それぞれ2060年後半、2050年となります。わずか0.5℃ですが取り組み速度の差はかなり大きくなります。

日本政府のGHG削減目標、エネルギー基本計画案、グリーン成長戦略案

日本では、2020年10月、菅総理(当時)の所信表明演説において、「2050年カーボンニュートラル」を目指すことが宣言されました。2021年4月の地球温暖化対策推進本部では、その中間目標を「2030年までに2013年比46%削減」とし、さらに「50%削減の高みに向けて挑戦する」ことが発表されました。

そして2050年カーボンニュートラル実現のための産業政策「グリーン成長戦略」では、温暖化対策はコスト増や成長の制約ではなく、成長の機会となるとし、カーボンニュートラルのためのイノベーションに対する税制優遇、助成金、規制改革などが打ち出されています。また2021年7月、エネルギー需給に関する基本方針となる「エネルギー基本計画」改正案が発表されました。2050年カーボンニュートラルを踏まえ、2030年には化石燃料由来を半減し、再生可能エネルギーを現行の22~24%から36~38%へ引き上げるとしています。

2021年5月、温暖化防止を目的とする法律「地球温暖化対策推進法(以下、温対法)」が改正され、「2050年カーボンニュートラル」が明記されました。温対法は企業のみならず自治体も対象であり、GHG排出抑制のための総合的な計画・施策の策定、および実施が求められています。その第一歩として、自治体の多くが2050年にCO2ネットゼロを目指す「2050年ゼロカーボンシティ」を表明しています。

企業にとってのカーボンニュートラルの考え方

日本をはじめ世界では2050年カーボンニュートラルが標準化し、ビジネスを行う上ではカーボンニュートラル取り組みは避けて通れません。取り組みを進める際には、SBTやRE100、EP100などの既存のカーボンニュートラルの枠組みを活用することが望まれます。

SBTとはScience Based Targetsの略で、科学に基づいたGHG削減目標のことを言い、パリ協定で求められている1.5℃や2℃未満水準(カーボンニュートラル)となる削減目標の設定と、取り組みが求められる。RE100(Renewable Energy 100%の略)は、自社事業運営の電力を100%再エネにすること、EP100(Energy Productivity 100%の略)は、事業のエネルギー効率を倍増させることを目標とするものです。いずれも国際的に認められているイニシアチブであるため、GHG削減を積極的に取り組むことを示す世界共通言語とも言えます。

なおSBTの対象範囲はScope1・2・3、要はサプライチェーン全体での削減目標の設定が必要になります。ただし、Scope3が全排出量の40%未満の場合はScope3の目標は不要です。また中小企業はScope3の算定は任意です。Scope1とは自社の事業活動に伴うGHG排出量、Scope2は購入した電気、熱、蒸気の使用に伴う排出量、Scope3は調達、輸送、製品の使用、廃棄などに伴う排出量を指します。

会員登録でリスクマネジメントがさらに加速

会員だけが見られるリスクの最新情報や専門家のナレッジが盛りだくさん。
もう一つ上のリスクマネジメントを目指す方の強い味方になります。

  • 関心に合った最新情報がメールで届く!

  • 専門家によるレポートをダウンロードし放題!

  • お気に入りに登録していつでも見返せる。