コンサルタントコラム

防災・減災シリーズ(雷害リスク):発生する雷の種類と特徴

[このコラムを書いたコンサルタント]

関口 祐輔
専門領域
安全文化醸成、安全管理全般、災害リスク関連の体制強化・支援に強み
役職名
リスクマネジメント本部 リスクマネジメント第一部長 主席コンサルタント
執筆者名
関口 祐輔 Yusuke Sekiguchi

2024.3.28

雷発生数の特徴について

雷は、気象条件によって発生した雷雲が原因で起こることから、条件がそろえば四季を通じて発生することになります。夏に積乱雲が発生しやすい地域、前線の発達に伴って雲が発達しやすい地域、山岳地帯、冬季(10 ~ 3月)にシベリア気団からの寒気が流れ込む日本海沿岸地域などは雷が多い傾向があります。全国的にみると、夏季(4 ~ 9月)では関東地方北部、岐阜県中部、九州の内陸部に多く発生し、冬季には秋田、新潟、富山、石川、福井県の日本海沿岸に多く発生しています。夏季雷の場合、内陸部であっても積乱雲が発達しやすい場所は雷の発生頻度も高くなります。

雷害を与える雷の現象

雷害を与える雷は、影響を与える状況、場所、対象物などによって下記のように分類されています。また、落雷で瞬時的に発生する高電圧によって電流が流れる現象は雷サージと呼ばれており、雷サージによって電気電子機器が被害を受けるケースも多い傾向があります。

  1. 直撃雷
    建造物、設備などの対象物に直接落雷することをいい、雷による電流が大地まで貫通した場合には対象物の破損、発火などの大きな損害が生じます。直撃雷の防護方法としては、避雷針、水平導体などの避雷設備の設置が挙げられます。
  2. 誘導雷
    建造物、樹木などに落雷があった場合に、雷放電路から強力な電波(電磁波)が発生し電磁界の急変によって近くの電線、アンテナなどに過電圧が生じます。この現象によって生じる雷サージにより電気機器や通信機器が故障する場合があります。防護方法としては、サージ防護デバイス(SPD、アレスタ 注1)など)の設置が挙げられます。
  3. 逆流雷
    建造物や近傍の樹木、鉄塔などに落雷した場合、雷電流の一部が配電線に逆流するように入り込み過電圧が生じます。この現象も雷サージとなって電気機器や通信機器に侵入します。防護方法としては、サージ防護デバイスの設置が挙げられます。


注)
1)SPD:Surge Protective Device、アレスタ:Lightning Arrester(LA)

雷のエネルギーとは

落雷が地上の対象物に与える影響は、雷自体が持つエネルギーの大きさの違いと落雷を受ける側の状況によって大きく左右されます。落雷の様子を観察した時、その閃光の強さや音の大きさの違いがあることから、雷のエネルギーに違いがあることは容易に類推できます。雷のエネルギーは、測定用に設置した避雷針に落ちた場合には電気的な特性を測定することが可能となりますが、多くの場合、発生した雷のエネルギーを直接測定することは困難です。そのため落雷を受けた対象物の状態や実験的な手法の結果から、エネルギーについての考察が行われています。

また、送配電用の鉄塔に設置された避雷器に設置された避雷器 注2)が落雷によって焼損する事例なども示されており、時として避雷器の電力容量を超えるエネルギーの落雷が発生する場合があることも知られています。落雷のエネルギーの目安としてピーク電流の大きさ(電流波高値)をみる方法があります。一般的に、上昇気流によって発生する熱雷や界雷では1 ~ 3万アンペア程度、大きなエネルギーを持つ冬季雷では10 ~ 30万アンペア程度といわれています。

また、落雷で発生する電圧の大きさは、直撃雷の場合で数万~数百万ボルト、落雷の周辺に発生した誘導雷などの雷サージの場合で数千~数十万ボルトとされています。直撃雷を受けた場合と間接的に発生した誘導雷を受けた場合とでは、そのエネルギーには大きな差があり、その対策も異なってきます。さらに、雷のエネルギーとしては、雷サージを受けていた時間が関係することも考慮しなければなりません。雷害対策を行う上では、雷を受けた時の最大のエネルギーを想定することが必要となります。

注)
2) 避雷器:高電圧配電線用の過電圧制御装置

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