コンサルタントコラム

防災・減災シリーズ(火災・爆発リスク):火災リスクを考える③

[このコラムを書いたコンサルタント]

関口 祐輔
専門領域
安全文化醸成、安全管理全般、災害リスク関連の体制強化・支援に強み
役職名
リスクマネジメント本部 リスクマネジメント第一部長 主席コンサルタント
執筆者名
関口 祐輔 Yusuke Sekiguchi

2024.3.28

延焼防止対策のポイント

延焼防止対策とは、防火区画・防火戸・防火シャッターなどを建物内の適所に設置することにより、延焼を食い止めるための対策です。この対策は焼損範囲を制限するだけでなく煙や有害ガスの拡散を抑制し従業員の避難活動を有効に行うために有効であり、前述の出火防止対策・消火対策と同様、非常に重要な対策です。特に、大規模施設においては、火災が進展して消火活動が行えないような規模になった場合、この延焼防止対策によってある一定の場所からの延焼が食い止められたケースも少なくありません。

  1. 建物構造・レイアウト
    建物の不燃化は、延焼防止対策のうち最も重要かつ効果的な対策です。すべての建物について構造および内装の不燃化を検討することが望まれますが、少なくとも火気を使用する建物、危険物を保管もしくは使用している建物については、優先的に進めることが重要といえます。また、火災の拡大は同一建物内での延焼拡大だけでなく、他の建物からの延焼にも留意し、隣接建物相互間の距離を必要に応じ保持させることが必要です。

  2. 防火区画
    耐火構造の壁・床などにより構成される防火区画は建物における火災拡大防止において最も重要な事項であり、日本においては建物の構造・規模・用途等により、建築基準法でその設置が義務付けられています。防火区画については、計画設計の段階から十分考慮しなければならないことであるが、設置後の維持管理もまた重要です。
    • 防火区画はより小さくする
      区画される面積は防火上は小さければ小さいほど望ましいが、建物の用途、構造、収容品の価値・性質など、その状況により防火区画の範囲を判定します。なお、日本の建築基準法では、鉄骨の工場の場合、原則として1,000㎡ごとに防火区画する旨規定されています。
    • 防火区画の開口部には防火戸を設ける
      区画の出入口・窓には防火戸を設け、またダクトの防火区画の貫通部には防火ダンバーを設けて、開口部の防護を完全に行う。なお、配管・電線等を通す開口部はモルタルなどで埋めもどしを完全に行う必要があります。
    • 防火戸の機能維持を図る
      常時閉鎖式防火戸は常に閉鎖し、開放状態で固定することのないようにします。
    • 防火戸の近くに物を置かない
      作業用資材等の放置や敷物が障害となって、防火戸の閉鎖が行えない場合があります。これらは、緊急時の閉鎖の妨げになるのみならず、それが可燃物であれば、たとえ閉鎖できた場合でも、防火戸を介しての輻射熱、あるいは戸のすき間からの火炎により、延焼をもたらす危険があります。このため、防火戸から少なくとも50㎝以内には、物を置かないようにします。

防火管理対策のポイント

防火管理対策とは、防火管理規程(消防計画)の作成および防火管理組織の編成などをもとに、計画的な従業員教育、火災危険の評価、消火や避難の訓練などを実施し、出火防止とともに万一、火災が発生した際に十分な機能が発揮できるように常日頃より体制を整備しておく対策のことをいいます。ハード面の防火対策を推進するためには、防火管理組織をしっかりと定め、組織的に有効に機能するように整備していくことが肝要といえます。実際の火災事例を見ると、消防の査察時に防火管理規程を整備してもその後の人事異動を反映していなかったケースや、ある時期を境に消火訓練・避難訓練が行われなくなっていたケースがあります。

  1. 防火管理体制の整備
    防火管理は、消防法で詳細が定められているが、要点は以下のとおりです。
    1. 体制を効果的に機能させるための権限をもたせた防火管理者を選任します。選任した防火管理者が社内で管理監督的な立場にないと、社内に防火管 理を周知徹底することは困難です。そのため、防火管理者は事業所全体に必要事項の指示、伝達ができる職位であることが望まれます。
    2. 防火管理者を中心に役割を明確にした防火管理組織および自衛消防組織を確立する
      有能な防火管理者がいても、防火管理が末端の従業員まで徹底されなければ、その効果は著しく低下してしまいます。また、緊急時に、防火管理者に対策を仰いでいては、時間的な遅れを生じる場合もあり、その時点における従業員1人ひとりの判断が重要となります。そこで、防火管理者を頂点とした防火管理組織を編成し、これが円滑に運営されなければなりません。当該組織の具体的な行動目標としては、以下の点が挙げられます。
      • 安全基準の作成と指導(安全基準には、喫煙および火気管理基準、設備管理基準、清掃基準、外部業者管理基準等がある)
      • 緊急時対応組織の確立(通報連絡班、消火班、避難誘導班、救護班)
      • 火災等の緊急時の各機械設備の緊急停止方法の確立
      • 従業員に対する安全教育(防火・避難)の実施・防火設備についての理解と保守管理
      • 各職場における設備の点検手順、事故の対処とその手順の確立
      • 職場パトロールと要改善事項のフィードバック
    3. 建物、施設の実態にあった防火管理規程(消防計画)を作成します
      防火管理規程(消防計画)については、消防法で一定規模以上の施設に関し作成が義務付けられています。防火管理組織の編成や自衛消防組織の活動内容を文書でまとめることにより、継続的な取組みを可能とします。
    4. 所轄消防署と定期的に連絡を取り合い、消防用設備等の点検、火災予防上必要な検査の指導や教育訓練等の情報交換を行います
      所轄消防署による定期的な点検を受けることで、消防火設備が適切に管理されているか確認し、維持管理を行います。点検の際に、各消防火設備の配置や業務内容を説明し、万一、火災が発生した際の避難ルートの確認や消火戦術の確認を行います。

  2. 消防訓練(消火訓練・避難訓練)の実施
    • 消防訓練は年2回以上行い、新入社員に対しては別途消火訓練を実施します。
    • 消防訓練は、「通報訓練」、「消火訓練」、「避難誘導訓練」を行います。

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