防災・減災シリーズ(地震リスク):日本付近で発生する地震の特徴
[このコラムを書いたコンサルタント]
- 専門領域
- 安全文化醸成、安全管理全般、災害リスク関連の体制強化・支援に強み
- 役職名
- リスクマネジメント本部 リスクマネジメント第一部長 主席コンサルタント
- 執筆者名
- 関口 祐輔 Yusuke Sekiguchi
2024.3.21
日本で発生した大規模な地震災害
日本では、地震により建物の倒壊、地震火災、地震に伴う津波等、大きな被害がくり返し発生してきました。
1995年に発生した阪神・淡路大震災は気象庁震度階級に震度7が導入されて以来、初めて震度7が適用された地震であり、約50,000人の死傷者・全半壊家屋約25万棟・経済損失約10兆円という戦後未曾有の大災害が発生しました。
2011年に発生した東日本大震災では津波を伴う広域かつ大規模な災害により、約28,000人の死傷者・全半壊家屋40万棟以上・経済損失約17兆円という日本全体に 多大な影響を及ぼす被害が発生しました。
また、2016年に発生した熊本地震では震度7を観測する地震が2回発生(日本観測史上初)し、多くの被害が発生した。こうした震災により地震の恐ろしさを再認識させられるとともに、地震に関する基礎的な知識を身に付けることの重要性が強く求められています。
日本付近で発生する地震の特徴
日本が世界有数の地震国であることは今や広く認知されており、人命を危機にさらすおそれがある自然災害として、多くの人が地震を挙げます。実際に、地震により多数の死傷者や建物倒壊がくり返し発生しています。
なぜ日本付近ではよく地震が発生するのでしょうか。
日本列島は、地球表面を覆う複数のプレートが互いにぶつかり合う地域にあたり、このプレート間の相互運動により蓄積された歪みエネルギーが解放されることで地震が発生すると考えられています。地震の発生形態は下記の通り、大きく3つの地震に分けられます。
- プレート境界の地震
日本列島付近では、陸側のプレートの下に海側のプレートが沈み込んでいます。このため、陸側のプレートの先端部分は海側のプレートに引きずり込まれる形となっております。陸側のプレート先端部分の歪みが限界に達すると、海側プレートへ固着している部分(特に強く固着している領域をアスペリティという)がはがれて跳ね上がり、地震が発生します。アスペリティ部分は地震の際に周囲よりも大きくずれ、強い揺れを引き起こす地震波を放出すると考えられています。
プレート境界付近ではこの運動がくり返されるため、ある程度一定の周期でくり返し地震が発生するといわれています。このタイプの地震には、関東地震(1923年、M7.9)、東南海地震(1944年、M7.9)、南海地震(1946年、M8.0)、十勝沖地震(1968年、M7.9)、三陸はるか沖地震(1994、M7.6)、東北地方太平洋沖地震(2011年、M9.0)などがあります。プレート境界の地震が海域で発生した場合、海溝型地震とも呼ばれています。海溝型地震は、震源から我々の生活エリアまでの距離が遠いものの、M8、M9といった大規模な地震となることがあり広域に影響を及ぼすといった特徴があります。また、このタイプの地震は津波の発生を伴うことも珍しくありません。 - 陸域の浅い地震
プレートの相互運動により、陸側のプレートに蓄積された歪みは、しばしば陸側プレート内部の断層運動により解放されます。この断層が地表面に現れたのがいわゆる活断層です。活断層は、いわば傷跡であり、歪みが蓄積されると周辺部分より弱い傷跡でくり返し地震が発生すると考えられています。活断層における地震の発生周期は地質調査から数千年〜数十万年と考えられており、プレート境界の地震に比べて長いと言われています。また、未確認の活断層で地震が発生することもあることに注意する必要があります。
活断層を震源とする地震は、一般にプレート境界の地震に比べ規模が小さく、過去の被害地震もM7程度のものが多いが、震源から我々の生活エリアまでの距離が近くなるため、比較的狭い範囲で大きな地震動を記録することがあります。福井地震(1923年、M7.1)、阪神・淡路大震災(1995年、M7.3)、新潟県中越地震(2004年、M6.8)、熊本地震(2016年、M7.3)などがこのタイプの地震です。ただし、濃尾地震(1891年、M8.0)のように複数の断層が一度に動くと巨大地震となることもあります。 - 沈み込むプレート内の地震
沈み込んだ海側のプレート内で破壊が起き、地震が発生することがあります。海側のプレートは陸域では深い位置に沈み込んでいるため、陸域近くで発生する場合には、活断層を震源とする地震に比べ震源の位置が深くなるのが特徴であります。また、海域において海側のプレート内部を震源として発生した場合には津波を伴うことがあります。このタイプの地震には、昭和三陸地震(1933年、M8.1)、釧路沖地震(1993年、M7.5)、北海道東方沖地震(1994年、M8.2)などがあります。
これまでの調査研究により、地震の発生メカニズムの解明が進んできています。しかし、地震はその発生自体をコントロールすることができず、いつ、どこで発生するかを予測することが難しいのが現状です。加えて、震源から遠く離れた建物に被害が発生するような長周期地震動に関する問題が近年注目されています。これは建物が立地している地盤の様態や建物の形状、発生した地震波の特性など、様々な条件によって各建物に発生する被害が大きく変わるため、各建物に発生する被害を予測するのも容易ではありません。このような予測の困難さは地震の脅威の一因ともいえます。