ISO39001「道路交通安全マネジメントシステム」の概要と意義
2024.3.21
規格の概要 ISO39001の規格概要
2012年10月1日に、新たな国際規格として、ISO39001(規格名:Road traffic safety(RTS)management sys tems -Requirements with guidance for use「道路交通安全マネジメントシステム−要求事項及び利用の手引き」)が発行されました。この規格は、道路交通事故による死亡者・重傷者の発生根絶を究極の目的としたもので、道路を使用する組織であれば、幅広い業種や組織で認証の取得が可能です。
本規格の究極の目的は「道路における交通事故死亡者、重大な負傷者の発生根絶」です。「道路交通事故による死亡者・重大な事故による負傷者ゼロ」という結果を出すことを目指す「結果重視」の規格であるため、事故削減の実効性のあるマネジメントシステムを構築する必要があります。 そのためには、本業たる事業の推進と交通事故削減を両立させる必要があります。
本規格ではマネジメントシステムをその組織の事業(存在の目的の中核となる活動)と融合させ、RTS(Road traffic safety(RTS)=道路交通安全、以下「RTS」と記載)方針やRTS目的を確立し、それらを組織の戦略的な方向性と確実に両立させることが求められています。すなわち、その企業の目指すべき方向性とISO39001のベクトルを一致させ、組織の事業プロセスとRTSマネジメントシステムを一体化させる必要があります。
本規格では、本業たる事業の推進と交通事故削減を両立させるRTSマネジメントシステムを構築し、運用・発展させていくために、経営トップ自らのリーダーシップとコミットメントが強く要求されています。
RTS目的・目標、計画の策定と「RTSパフォーマンスファクター」
事故削減の実効性を高めるためには、組織内外の課題や利害関係者のニーズ・期待など、組織が置かれている状況を踏まえたRTS目的・目標とこれらを達成するための計画を策定することがポイントとなります。 以下、RTS目的・目標、計画の策定と、本規格の大きな特徴である「RTSパフォーマンスファクター」について解説します。
通常は、ISO規格では、組織が行うべき様々な事柄(規格の要求事項)については具体的に記載されていません。ISOの認証取得を目指す組織は、それぞれの組織の状況にあわせて、規格の要求事項を読み取り、組織の業務内容に照らし合わせて規格を解釈して、具体的に取り組むべき事項を決定し、どのように達成し、どのように結果の評価をするのか等を決めていくことになります。
しかし、本規格では、道路交通安全(RTS)対策のために有効と考えられる「要因」(factor)について、具体的に例示されており、組織は、例示されている「RTSパフォーマンスファクター」の使用方法を特定し、組織が取り組むべきRTS目的・目標の策定につなげていくことができるようになっています。 これは、本規格が先進国のみならず、交通事故の死傷者の90%を占める開発途上国において採用されることも想定しているためです。
全世界の専門家の研究、先進国の英知や経験、取り組みから得られた効果のある対策を具体的な要因として明示することにより、開発途上国においてこの規格を普及させる場合においても、実効性の高い取り組みができることを本規格は目指しています。
認証取得の意義
この規格は前述のとおり「結果重視」の規格です。本業たる事業の推進と事故削減の実効性を両立させるRTSマネジメントシステムを構築し、運用・発展させていくことが重要であり、これこそがISO39001の認証を取得する大きな意義となります。
また、ただちに認証取得にとりかかれない組織においても、ISO39001の規格の要求事項や理念を参考にしてPDCAサイクルを適切に機能させることができれば、効果的に事故削減を実現することも十分可能です。 世界の叡智を結集した国際的な認証規格であるISO39001を自社の交通事故防止対策として取り入れない手はありません。
これらのマネジメントシステムや要求事項の考え方が、皆さま方企業における交通事故の防止・低減の具体的成果につながれば、幸いです。