白ナンバー事業者における「アルコール検知義務化」への対応
2024.3.21
改正の経緯
これまで、安全運転管理者に対しては、運転前において運転者が飲酒により正常な運転をすることができないおそれがあるかどうかを確認することが義務付けられていましたが、運送事業者における運行管理者の業務とは異なり、運転後における酒気帯びの有無を確認することや、その確認内容を記録することは義務付けられていませんし、また、確認方法についても具体的に定められていませんでした。
2021年6月に、千葉県八街市で発生した、小学生の児童が犠牲となった大変痛ましい交通死亡事故を受け、8月に決定された緊急対策において、「自動車を一定数以上保有する使用者に義務付けられている安全運転管理者等の未選任事業所の一掃」と「乗車前後におけるアルコール検知器を活用した酒気帯びの有無の確認の促進」等、安全運転管理者の業務内容の拡充を図ることとされました。
改正の契機となる事故発生から1年以内の開始と、異例の速さでの改正であり、安全運転管理の実効性向上に対する関係機関の強い意志が感じられます。
安全運転管理者の業務
一定台数以上の自家用自動車の使用者は、自動車の安全な運転に必要な業務を行わせるため、その使用の本拠ごとに、安全運転管理者等を選任する必要がある旨道路交通法で定められています(道路交通法第74条の3第1項)。なお、安全運転管理者や台数により選任する副安全運転管理者を選任しなかった場合には、「5万円以下の罰金」(法人両罰5万円以下の罰金)という罰則があります。
改正前の道路交通法施行規則(第9条の10)における安全運転管理者の業務においても、運転者の点呼を行うなどにより、自動車の運行前点検の実施状況や、飲酒、過労、病気その他の理由により正常な運転ができないおそれがないかどうかを確認し、安全運転を確保するために必要な指示を与えるものとされていました。すなわち、今般の改正は、「安全運転管理者が、すでに実施していること」に加え、「運転後における酒気帯びの有無の確認」と「確認方法や確認内容の記録」が新たな義務として追加され、確認方法についても具体的に定められたものとご理解いただければと思います。
アルコールチェックの義務化対応における留意事項
警察庁交通局による2021年11月10日付通達「道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令等の施行に伴う安全運転管理者業務の拡充について」において、実務上の運営における留意点が案内されています。
主な事項について、以下に示します。
運転前後の運転者に対する酒気帯び有無の確認について
- 業務の開始前後の運転者に対する確認
「運転」とは、一連の業務としての運転をいうことから、酒気帯びの有無の確認は、必ずしも個々の運転の直前に行わなければならないというものではなく、運転を含む業務の開始前や出勤時、及び終了後や退勤時に行うことで足りる。 - 目視等及びアルコール検知器による酒気帯び確認の方法
「目視等で確認」とは、運転者の顔色、呼気の臭い、応答の声の調子等で確認することをいう。運転者の酒気帯び確認の方法は対面が原則であるが、直行直帰の場合などは対面での確認が困難な場合にはこれに準ずる適宜の方法で実施すればよく、例えば運転者に携帯型アルコール検知器を携行させるなどした上で、- カメラ、モニターなどによって、安全運転管理者が運転者の顔色、応答の声の調子等とともに、アルコール検知器による測定結果を確認する方法
- 携帯電話、業務無線その他の運転者との直接対話できる方法によって、安全運転管理者が運転者の応答の声の調子等を確認するとともに、アルコール検知器による測定結果を報告させる方法
今般の改正対応は、改正が施行されるタイミングで必要な対応を迫られることになります。現状、安全運転管理の運用の中で、「点呼等」を実施できていない事業者においては、まずは、「点呼等」を誰が行うのかについて、決定し実施する必要があります。また、組織として、「点呼等」の実施状況をどこで吸い上げ、管理するのか、責任部署を明確に定めることが必要となります。現状の規程の見直しや、他社の雛形の「移植」だけでは、自社の実態に応じた対応は難しいといえます。
まずは、今般の改正内容を正しく理解し、それぞれの実態を踏まえ、適切な対応を行うことが必要です。