コラム/トピックス

運行管理者と運転者のコミュニケーション ~安全風土との関係性~

2024.3.21

コロナ5類感染症移行後も残るコミュニケーションへの悪影響

交通リスクを担当するコンサルタントとして、特に、運輸事業者の運行管理の場面において、新型コロナウイルス感染症の影響で運転者と管理者のコミュニケーションの取り方が変わってきていることを強く感じています。

コロナ前には、集合研修や日常的な会話の中で、運転者と管理者がコミュニケーションを行う機会が多くあったものの、コロナが5類感染症へ移行した現在でも影響が強く残り、研修実施や会話が減ってきているという話をよく耳にします。

ある運輸事業者へ訪問した際、運行管理者が運転者とどのような会話を交わしているか確認したところ、現場は非常に忙しく事務的になっており、会話や指示ができているとはいえない状況でした。また、実際に事故が多いとも聞きました。

そこで、事故を起こした運転者を含め、当時どのような状況で事故が発生したのか話を聞いた際、実は運転者は管理者に本当の事を話しておらず、生活が苦しいとの理由から本業以外に会社に内緒でアルバイトをしていたということが判明しました。本来睡眠に使うべき時間に働いており、運転者は睡眠不足だったのです。そもそも論外ではあるものの、それを言い出せないくらいの事情が本人にはあり、その後、運行管理者らと相談し、副業をしなくても済むようなシフトにするなどして改善されたという事例がありました。

また、別の運輸事業者では、営業所長が複数事故惹起運転者の記録を整理し再発防止を検討する際に、運転者の顔や生活状況等が目に浮かび、「重大事故を起こしたりして退社するようなことがないようにしてあげたい」と涙ぐんでいる様子が見られました。この営業所長は、運転者のシフトを夜勤から昼勤へ変更したり、乗務時間を短くすることで少しでも事故を発生させる確率を少なくしようと懸命に考えていたのです。

安全運行における管理者と運転者のコミュニケーションの目的

運輸事業者においては、運行管理者は普段の業務で運転者の運転ぶりと併せて、運転者に質問し、問題点がないか確認する必要があるものの、そのためには常日頃から人間関係ができている必要があります。それができていなければ、運転者は何か起こった時に、果たして本当の事を管理者に言ってくれるのでしょうか。

安全運行におけるコミュニケーションの目的は、いざ厳しい指導をしなければいけない機会に、言いにくいことでも運転者に対してきちんと言って、指示を聞いてもらえる信頼関係の下に、確実に安全運転をさせることと考えます。例えば、運転者は運行管理者の言葉に渋々耳を傾けているかもしれません。運行管理者が「今日も安全運転よろしくね」と運転者の身の安全を気に掛けていることを伝えることも大切です。

ほかにも、運転者の出身地で大きな自然災害が発生したことや、子どもが高校・大学受験を控えていることなど、気になっていることや悩んでいることをオープンにしてもらい、運転者が安全運転に集中できれば、事故の未然防止、ひいては労働環境の改善にもつながります。

運輸事業者以外の企業でも同様のこと 日頃のコミュニケーションによる人間関係の構築で期待される効果

安全運行のためには運行管理者は、運転者に対して関心を持っていなければいけません。

運転者が運行管理者の話を聞くかどうかは、やはり日頃のコミュニケーションが大切です。人間関係ができていれば、例えば運行管理者が運転者の良い点を褒めたり、心配していることを伝えたうえで、一時不停止を厳しく注意したとしても、「あの人の言うことなら仕方ない」と耳を傾けてくれるでしょう。

これらの話は、運輸事業者に限った話ではありません。白ナンバーの社有車を使用する多くの企業の管理者の皆さんにとっても、運転者に安全運転も業務のうちであることを意識させ、日々の安全運転を実行させるには、安全運転に関するコミュニケーションを確保するように心がけていただきたいです。

コロナが5類感染症へ移行した状況下においても、コロナ時と同様に「密」を避けるとの名目で、日頃のコミュニケーションをないがしろにしてはいないでしょうか。

経営者・管理者が安全に対するリーダーシップを率先して発揮し、社員と一体となりながら安全風土を構築し、継続的に安全意識を高める取り組みは欠かせません。

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