コラム/トピックス

「運輸安全マネジメント評価」結果にみる安全管理体制構築の課題

2024.3.21

運輸安全マネジメント評価の内容

運輸安全マネジメント評価は、国土交通省の評価担当者による経営トップおよび安全統括管理者等の経営管理部門へのインタビューと文書・記録類の確認を通じて、事業者が構築した安全管理体制のさらなる向上に資するため、創意工夫がなされている事項、熱心に取り組んでいる事項、優れている事項等について評価を行います。

継続的に取り組む必要があると思われる事項、工夫の余地がある事項、さらに推進すると効果が向上すると思われる事項等について助言を行います。また、運輸安全マネジメント評価は、「保安監査と併せ、いわば車の両輪として実施することにより、輸送の安全確保に係る取り組みを活性化させ、より一層の安全性の向上を図ることを目指している」とされています。

2022年(令和4年)4月1日以降、貸切バス事業者の事業許可更新を対象として、前回更新時以降に輸送施設の使用停止処分以上又は使用制限(禁止)の処分を受けた事業者は、次回事業許可更新申請までに認定事業者による運輸安全マネジメント評価を受けることが義務化されました。

MS&ADインターリスク総研が実施する第三者評価(注)は2日間に渡って実施するもので、1日目は経営トップ、安全統括管理者、安全推進室長(各事業者の安全管理部門の長等)へのインタビューが行われます。
2日目は評価員による文書・記録の確認と評価報告書の作成が行われます。事業者の規模によりますが、基本的には2日目の夕方にクロージングミーティングを実施して評価報告書を手交し、評価対象事業者において確認できた好取り組みに対する評価、さらに推進すると効果が向上すると思われる事項等について助言を行います。

なお、この運輸安全マネジメント評価は保安監査とは異なり、自社の輸送の安全性向上のため積極的に取り組んでいる事項を、インタビューや文書・記録の提出をもって評価するものです。自社の実態を正確に報告することで、評価員も事業者の取り組みの強み・弱みが把握できるため、評価を受ける事業者の皆さまには、今後のさらなる安全性向上のポイントとなる事項として受け止めていただくようお願いしています。

注)
本稿では、「認定事業者による運輸安全マネジメント評価」について、国以外の認定事業者が「第三者」の立場で行う評価であることから、便宜上一般的に用いられている「第三者評価」と表現し記載しています。

当社が実施した運輸安全マネジメント評価結果からみる貸切バス事業者の評価と助言

MS&ADインターリスク総研が2022年4月1日から2023年3月31日までに実施した第三者評価結果(以下、「当社が実施した第三者評価結果」)の評価・助言の件数割合の中で、評価については、「経営トップの責務」が最も割合が高く21%となりました。

次いで、「安全統括管理者の責務」・「重大な事故・自然災害等への対応」が13%でした。経営層が主体的に対応すべき項目が高い傾向となりました。

一方で、助言については、「事故、ヒヤリ・ハット情報等の収集・活用」が最も割合が高く32%となりました。

次いで、「安全重点施策」および「マネジメントレビューと継続的改善」が18%で続いており、さらに「内部監査」についても14%と高い割合となりました。

事業者における取り組みのポイント

貸切バス事業者における運輸安全マネジメントへの取り組みは、事業規模や地域性など個々の事業者の環境により一概に表現できるものではありませんが、PDCAサイクルを活用した継続的な取り組みを実施するという点で課題はあると認識しています。

取り組み全般のPDCAはもちろんですが、例えば安全方針におけるPDCAサイクルの取り組みでは、安全方針を策定する(P)、安全方針を周知する(D)、従業員の理解度を把握する(C)、理解度を踏まえ改善する(周知方法を変更する、方針を見直す等)(A)といった、各項目における小さなPDCAを回すことも重要と考えます。

本稿は事業許可更新にあたり認定事業者による評価が必要な事業者の取り組み状況を中心に解説してきましたが、その対象とならない運輸事業者においても、自社の安全管理体制の構築状況を確認する機会としていただければ幸いです。
また、自社の取り組みについて外部評価機関の「第三者目線」での評価を受けることは、取り組みを客観的に振り返る良い機会になります。

本稿をご覧の皆さまにおいては、自社の取り組みを今一度ご確認いただき、それぞれの立場から改善に向けた取り組みに着手していただくことを期待しております。

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