企業の自動車運行に関する安全対策(リスクマネジメントの視点から)
2024.3.21
企業における自動車運行リスクとその影響
自動車は多くの企業において業務遂行に欠かせない存在であり、その運行には多くのリスクが伴います。これらのリスクは、企業のリスクマネジメント上、高い優先順位で検討すべき課題となります。具体的には、自動車事故により企業が受ける損害は以下のように整理することができます。
- 車両の損害
自動車事故により車両本体や高額な内装、機器が損傷することによる損害です。 - 自動車保険料の増加
事故発生により保険料の負担が増加し、その影響は数年間残ることがあります。 - 休業損害
事故により業務が停止し、業務効率の低下や営業利益の損失が発生することがあります。 - 人的な損害
従業員等の死亡・傷害により支出する治療費等の費用が該当します。 - 第三者への賠償
事故により第三者の身体もしくは財産に損害が発生した場合には、損害賠償責任が発生することがあります。 - 社会的信用の失墜
大きな自動車事故や重大な過失による事故を起こすと、その企業の社会的信用が失墜することも考えられます。
これらのリスクを適切に管理し、事故を未然に防ぐための対策が求められます。
自動車運行に関する安全対策のポイント
企業における自動車運行に関する安全対策を検討するにあたり、以下の視点が重要となります。
- 経営者・管理者の取組姿勢
自動車事故防止対策は、他のリスクと同様に、経営者の積極的な取組姿勢を示すことが大前提です。また、運転者を教育指導する立場の管理者の役割発揮が重要です。 - 安全運転管理(運行管理)体制
自動車事故の多くは人的要因によって発生していますので、対策を系統立てて無駄なく実施できる体制の整備が必要です。 - 運行の管理
運行経路、運転時間、車両の状況、道路の状況や気象条件などを的確に把握し、適正かつ効率的な運行計画を立てることが重要です。 - 運転者の管理
事故原因の多くは脇見運転等の安全不確認です。運転者に最適な状態で安全に運転させるために、運転者の状態を把握して適切な管理を行うことが重要です。 - 車両の管理
社有車の無断使用や私用運転中に事故が発生した場合でも会社の管理責任が問われます。それを避けるためには車両や車両の鍵の保管を確実に行うことが重要です。 - 安全運転教育
企業が事故を減らすためには、運転者にいかに安全運転をさせるかということが重要です。 - 事故防止活動
社内で事故防止活動を展開し安全運転への意識付けを行う必要があります。 - 事故の管理
事故が発生した際の対応も重要な要素となります。
これらの視点を踏まえ、企業ごとの状況に応じた具体的な対策を策定し、実行することが求められます。
自動車運行リスクの分析と対策の具体例
自動車運行リスクを具体的に分析し、それに対する対策を立案するためには、まず事故の傾向を理解することが重要です。具体的には、事故発生場所、事故類型、事故原因などを分析し、それに対する対策を検討します。
例えば、交差点および交差点付近で事故が多く発生するのであれば、交差点付近の運転に注意を促す教育を行う、信号機のない交差点での運転を避けるルートを選択するなどの対策が考えられます。
また、追突や出会い頭の事故が多い場合には、運転者に対して十分な車間距離を保つように指導する、事故原因が安全運転義務違反によるものであれば、運転者に対する安全運転教育を強化する、などの対策が考えられます。
さらに、運転者の体調面や心理面への影響も考慮する必要があります。体調不良や疲労の状態、急ぎ、焦りの心理状態では安全不確認や先急ぎ運転等の危険な運転につながりやすく、運転者の安全意識向上、知識習得等の対策のみならず管理者による指導強化、余裕のある運行計画の策定などの対策が考えられます。
これらの対策は、自動車運行リスクを具体的に理解し、それに対する適切な対策を講じることで、企業の自動車運行に関する安全対策を強化することにつながります。