コラム/トピックス

自動運転の社会実装に向けたリスクアセスメントの重要性

2024.3.21

自動運転の社会実装に向けた動向

近年、モビリティ(とりわけ自動車)に関する技術の進化は目覚ましく、特に「Connected(コネクト化)」「Autonomous(自動化)」「Shared & Services(サービス化)」「Electric(電動化)」の技術・サービスにより変革する新しい移動手段の形、いわゆるCASEが注目されています。

その中でも「Autonomous(自動化)」の領域は特に進化が著しいものがあります。2023年4月1日には「レベル4」の特定自動運行許可制度を盛り込んだ改正道路交通法が施行され、特定条件下での完全自動運転が可能となり、ドライバーに依存しない走行が可能となりました。この改正によって、全国で初めて福井県永平寺町で「レベル4」での自動運転移動サービスが開始されています。

また、政府は自動運転サービスを2025年度に全国50ヵ所、2027年度では全国100ヵ所以上実装するとしたマイルストーンを掲げています。国土交通省は自動運転サービスの社会実装に向けて地域公共交通確保維持改善事業費補助金(自動運転事業関係)の公募を実施し、2023年度は全国60ヵ所62事業が採択されました。自動運転サービス実装に関するマイルストーンを踏まえると、今後全国で自動運転に関する実証実験が拡大するものと考えられます。

自動運転の可能性と期待

自動運転は公共交通空白地域での活用や、高齢者、障がい者など交通弱者の移動手段の改善、ドライバー不足や高齢化問題の解決等、様々な社会課題解決のひとつの手段として期待されています。
また、人間からシステムへ運転の主体がシフトすることで、疲労、注意散漫、速度超過などのヒューマンエラーによる影響を減少させ、交通事故の発生率を低減させることにも高い期待が寄せられています。
また、移動中の車内で会議を実施できる自動運転車内オフィスや自動運転を活用した移動式店舗など新たなビジネスモデルなども検討されており、社会に変革を持たらす可能性があります。

自動運転の課題とリスクアセスメント

一方で、自動運転移動サービスの普及に向けた課題も存在します。

技術面では、あらゆるシチュエーションにおいて高い信頼性と安全性が確保できるか、正確なデータ処理、障害・イレギュラーへの対応能力、セキュリティの確保、システムの冗長性等、多くの要素に対して高い信頼性と安全性の向上が求められています。しかし、全く新しい技術、サービスであるため、リスクを生じさせるハザードや、リスクの大きさなどが不明瞭である可能性があります。

これらの課題を解決するためには、リスクアセスメントが重要となります。リスクアセスメントとは、リスクを特定、分析、評価し、その結果を基にリスクを管理するための対策を立てるプロセスのことを指します。自動運転のリスクアセスメントでは、技術的な問題だけでなく、法制度、社会受容性、インフラ整備等、多角的な視点からリスクを評価し、その対策を立案する必要があります。

例えば、自動運転システムが作動する前提となる走行環境条件(ODD)の設計には、運行経路や乗降場所の道路構造や交通の流れなどを把握し、実際の交通環境におけるリスクを適切に評価することが重要となります。また、自動運転サービスには運行当事者のほか、サプライヤー、利用者など様々なステークホルダーが複雑に関係しあうこととなるため、ステークホルダー及びサービス運用プロセスを可視化し、プロセス上で発生しうるリスクについても評価することが重要となります。

リスクの低減策については、それぞれのサービスや運行の実態が異なるため、画一的な対策ではなく、サービスや運行の実態を踏まえたうえで、多角的な視点からリスク対策を立案することが重要となります。

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