コンサルタントコラム

ストレスチェック制度を活用した職場の課題把握と組織活性化

[このコラムを書いたコンサルタント]

對間 裕之
専門領域
健康経営、メンタルヘルス、労災対策関連の体制構築及び推進支援に強み
役職名
リスクマネジメント第四部 人的資本・健康経営グループ グループ長 主席コンサルタント
執筆者名
對間 裕之 Hiroyuki Taima

2024.3.25

ストレスチェック制度の活用とその重要性(厚生労働省のねらいと次なる課題とは)

  1. ストレスチェック制度の目的と現状
    近年、仕事や職場において強いストレスを感じる労働者は半数以上という状況が続き、また、職場における強いストレスが原因で精神障害を発病し労災認定される労働者が増加傾向にあります。
    そのような中、ストレスチェック制度は2015年に労働者50名以上の事業場を対象として義務付けられました。厚生労働省のねらいは、各企業・事業場が労働者のストレスの程度を把握し、その中でストレスの高い者を早期に発見して適切な対応を行うことで、メンタル不調を未然に防止することです。
    開始以降、厚生労働省の2021年の調査では8割以上の企業がストレスチェックを実施しています。
  2. 次なる課題とは
    前述のように既に大半の企業はストレスチェックを実施していますが、一方で多くの企業では、思うようにメンタルヘルス不調者を予防・低減できず苦労している状況です。その要因の1つとして、ストレスチェックの結果を職場環境改善に活かしきれていないことも挙げられます。ストレスチェックを実施して、労働者本人に結果を知らせるだけでなく、強いストレスの原因が職場や業務にあるのであれば、これらを着実に改善していく必要があります。そのためにはまず、ストレスチェックの結果を読み解いて分析し、職場の改善につなげていくことが必要です。

ストレスチェック結果を活用した職場環境改善の進め方

それでは、どのようにストレスチェック結果を活用し、職場環境の改善につなげていけば良いのでしょうか。具体的なステップを説明します。

    1. 集団分析結果を職場にフィードバックする
      ストレスチェックの結果は、個人の結果と職場の結果の2つがあります。個人の結果は本人によるセルフケアのヒントになり、職場の結果(=集団分析結果)は、職場の状況を把握し、改善につなげるためのヒントとなります。職場の課題解決につなげるためには、まず集団分析結果を各職場へフィードバックし、現状を把握してもらう必要があります。

    2. 各職場で改善に向けた協議とアクションプラン策定を行う
      一般的には、職場の状況を踏まえた改善策について管理職のみが検討することも多いのではないでしょうか。
      しかしながら、効果的に改善していくためには、管理職のみの視点だけでなく、メンバーの多様な視点も踏まえて課題の原因や解決策について検討していく必要があります。そのため、職場内でメンバーを集めディスカッションの機会を設けることをお勧めします。
      なお、ディスカッションの際には、まずはじめに「この職場の良いところ」から洗い出し、次に「この職場の課題」や「原因・対策」について協議しましょう。最初から課題について議論すると、ネガティブな意見ばかりとなり、良い点が見過ごされてしまいます。
      この討議を踏まえ、職場でできることを「アクションプラン」として策定します。取り組みは、比較的解決しやすい、自分たちの職場ですぐできることなどを含め、中長期で取り組む大きな課題ばかりとならないようにします。

    3. 改善の実行とフォローアップを行う
      各職場では、策定したアクションプランについて実際に活動を進めます。職場の週次・月次会議などでその取り組み状況を共有し、定期的にモニタリングしていきます。
      また、会社全体のメンタルヘルスを所管する人事部門等では、定期的に各職場の取り組み状況を聴取し、何か必要があれば支援していくことが望まれます。多くの場合、各職場ではアクションプランまでを作成するものの、その後の改善活動が継続されないことが課題となります。
      メンタル不調者の発生を予防・低減するだけでなく、職場の活性化につなげるためには、着実に活動が継続されなければなりません。

改善を進めるにあたって(留意点と成果の活用)

    1. 改善を進める上での留意点
      職場環境の改善により成果が現れるまでに時間がかかることもあります。できるだけ短期的な成果につながる課題も織り交ぜてスモールWinを獲得し、効果を実感できるようにしていくことも大切です。また、すぐに結果に結びつかない場合でも、改善に向けた取り組みがなされたそのプロセスを評価することも重要となります。

    2. 好取組事例が生まれたら
      社内で実際に改善の成果が生まれた職場については、好取組事例として社内へ周知し、他の職場の参考としてもらうことも有効です。自社内で実際に成果が出た事例を目の当たりにすることで、他の部署の活動も促進されることとなります。また、そのような好取組職場を会社として表彰するような機会を設けることで、会社全体の意欲向上も期待されます。

以上、このような取り組みを参考に、従業員がより活き活きと働ける職場づくりや組織全体の活性化につなげていきましょう。

【参考情報】
健康経営インフォメーション<2022 No.4>「ストレスチェック結果を活用した職場環境改善(メンタルヘルス対策を中心に)」
https://www.irric.co.jp/risk_info/health/2022_04.php

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