コラム/トピックス

介護施設等における高齢者虐待防止研修の重要性とポイント

2024.3.25

虐待発生件数の推移と虐待防止規定の創設

介護施設・事業所における高齢者虐待発生件数が過去最高となっており、増加傾向に歯止めがかかりません。厚生労働省が毎年公開している「「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果」によると、2022年度における介護職員等による高齢者虐待の件数は856件あり、前年度よりも117件(15.8%)増加しました。

こうした介護施設・事業所における高齢者虐待の増加を背景として、介護施設従事者等による高齢者虐待防止の取り組みを強化する観点から、令和3年度介護保険制度の改正において虐待防止規定が新たに創設されました。各介護サービスの運営基準も改正されたことにより、令和3年4月1日から全ての介護サービス事業所を対象に、利用者の人権擁護、虐待防止等の観点から、虐待の発生またはその再発を防止するための委員会の定期的な開催、指針の整備、従事者への研修の定期的な実施、担当者を置くことが義務化されています(3年間の経過措置有)。

2024年3月までは経過措置期間ではありますが、高齢者虐待が依然として増加していることから未実施の介護施設・事業者においては早急な対策、実施を図ることが求められています。

高齢者虐待の発生要因と必要な研修プログラム

養介護施設従事者等による高齢者虐待の発生要因は、先述の「令和4年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果」によると「職員の教育・知識・介護技術等に関する問題」(56.1%)が最も高く、次いで、「職員のストレスや感情コントロールの問題」(23.0%)、「虐待を助長する組織風土や職員間の関係の悪さ、管理体制等」(22.5%)となっています。

虐待の発生要因については職員個人の問題としてのみ捉えるのではなく、組織環境の問題も含めた様々な要因が複合的に重なることによって発生するものと捉えるべきですが、職員自身が高齢者虐待について正しい知識及び認識を持つことは不可欠です。

しかしながら、この調査結果から職員の高齢者虐待に関する知識や介護スキル等の習得機会、あるいは学習内容に課題があることが推察されます。職員が虐待行為に該当すると知らずに、あるいは意図せずに行った行為が結果として虐待となるケースもあるため、この点からも職員に対し虐待に関する正しい知識及び認識を促す研修プログラムを設定することが必要です。

また、「職員のストレスや感情コントロールの問題」を解消するにあたっても、職員自身がストレスにどう向き合えばよいのか、あるいは感情をコントロールする術を職員が身に付ける必要があり、事業者はそれらを含めた研修プログラムの設定を行う必要があると言えます。

高齢者虐待防止研修プログラムについて

MS&ADインターリスク総研では、厚生労働省令和2年度老人保健健康等増進事業において「介護施設における効果的な虐待防止研修に関する調査研究事業」の採択を受け、介護施設・事業所の全ての従事者を対象とした高齢者虐待の防止に資する研修プログラムを開発しました。

本調査研究事業において設置された検討委員会での議論を踏まえた、高齢者虐待の基礎的な知識の習得を目指し、弊社ホームページで公開 (https://www.irric.co.jp/reason/research/index.php)しており無償で閲覧できます。研修プログラムの作成や実施に悩まれている施設・事業者におかれては是非参考にして頂ければと思います。

また、有償となりますが、弊社では本調査研究事業で開発した「介護施設・事業所における虐待防止研修」プログラムを各介護施設・事業所で実施する際のサポートや事例演習を実施する際の講師を派遣するサービスを実施しておりますので、導入を検討される介護施設・事業所におかれては、MS&ADインターリスク総研までご照会ください。

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