コラム/トピックス

JPX、TCFD提言に沿った情報開示の実態調査結果を公表

2024.3.26

企業の対応は二極化、TCFD提言に沿った情報開示

2023年1月20日、株式会社日本取引所グループ(以下、JPX)は、JPX日経インデックス400構成銘柄を対象に実施した「TCFD提言に沿った情報開示の実態調査」の報告書を公表しました。JPXは、2021年にTCFD賛同上場会社259社(2021年3月末時点)を対象とした調査を実施していましたが、今回の調査では対象をJPX日経インデックス400構成銘柄に拡大し、TCFD提言の開示推奨11項目の開示状況について、項目別、企業の属性(規模・業種)別に実態を示しました。

本調査では、各調査項目で企業における対応の二極化が明らかになりました。開示項目数の分布を見ると、「11項目すべてを開示している企業」と「すべての項目を開示していない企業」が全体の上位を占めています。また項目別の開示状況では、開示割合が高い項目は前年度の調査と同様に「リスクと機会」、「取締役会による監視体制」、「スコープ1、2の排出量」であり、低い項目は「シナリオ分析」、「統合的リスク管理」でした。さらに業種別の比較では 、製造業全般、建設・不動産業、銀行業は開示が進んでいるのに対して、小売業、サービス業、その他金融業では開示が遅れていることがわかります。

企業は本調査結果から同業種の開示傾向を把握し、開示情報の質と量の充実化の参考とすることができます。一方で一定数の企業は、気候変動に関するリスクや機会の評価やそれに基づく戦略・目標策定の段階はほぼ完了し、具体的な取り組みを着実に実行する段階に移行しつつあります。単に情報開示のための取り組みにならないように注意することが望まれます。

【参考情報】

サステナビリティ情報の有報開示が義務化、 TCFDの枠組みを踏襲

政府は2023年1月31日、有価証券報告書(以下「有報」)でのサステナビリティ情報記載義務化を含む改正「企業内容等の開示に関する内閣府令」を公布、即日施行しました。2023年3月期の有報からのサステナビリティ情報記載義務化が確定しました。

改正府令で、有報に「サステナビリティに関する考え方及び取組」の記載欄が新設。サステナビリティ全般に係る取り組みについて「ガバナンス」「リスク管理」が必須記載事項になります。一方、「戦略」「指標及び目標」は、「各企業が重要性を判断して」記載するか決めます。記載しない場合は、根拠の記載が求められます。ただし、人的資本や多様性の開示では、「戦略」「指標及び目標」で人材育成や社内環境整備の方針や目標などの記載が必須です。これら4つの項目は、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の枠組みを踏襲した格好です。サステナビリティに関連する将来の情報については、一般的に合理的と考えられる説明であれば記載と異なる結果が生じても直ちに虚偽記載の責任を問わないなど、開示企業への配慮が設けられました。

金融庁は施行と同時に「記述情報の開示の好事例集 2022」を公表しました。サステナビリティ情報に関しては、気候変動についてTCFD提言に沿った開示や財務情報とのコネクティビティ、人的資本と多様性では自社の独自性と指標の比較可能性の両立、目標設定と企業理念の結び付きの説明などがポイントに挙げられています。また、先行事例には個別のコメントが付されています。新制度に対応するためのヒントを得られそうです。

改正府令は、22年6月公表の金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告(WG報告)の提言に基づく内容です。同年11月に同提言を踏まえた改正案の公開後、パブリックコメントの意見などを一部反映しました。

【参考情報】
2023年1月31日 金融庁HP

※本記事は、2023年3月1日発行のMS&AD InterRisk Report・ESGトピックス「JPX、TCFD提言に沿った情報開示の実態調査結果を公表」「サステナビリティ情報の有報開示、23年3月期からの義務化が確定」を再編集したものです。

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