コンサルタントコラム

FSSC22000の認証取得に向けた準備とは? ~HACCPの一歩先を行く食品安全マネジメントシステム~

2024.4.4

食品安全マネジメントシステム(以下、FSMS)のなかでもFSSC22000は、GFSIのベンチマークスキームとして承認されており国際的に通用すること、また、食品安全実現のためにさまざまな観点から網羅的に取組事項が提示されていることから、国内において普及が進んでいます。そこでこの記事では FSSC22000 の認証取得に向けて準備すべき事項について解説します。

なお、今回述べる内容は、組織における取組の一例を示したものです。これを参考に、各組織において最適な取組をされることをお勧めします。

① 経営トップのコミット

FSSC22000の取得にあたっては、製造部門のみならず、品質管理部門・営業部門などさまざまな部門と連携し、全社で一体となって進めていく必要があります。そのためには、経営トップが全役職員に対し、本取組を推進していくことをコミットすることが求められます。その際、経営トップは、FSMSの取組とは無関係だと考える従業員が現れないよう、「なぜ取り組むのか」を経営者が従業員に対し明確に宣言することが大切です。

「お客さまの食の安全と品質確保のため」、「自社の持続的発展を目指すため」、「ブランド力を高め、かつ、地域の発展に貢献するため」など取組む目的を伝え、組織内の士気を高めるとよいでしょう。

② 推進組織の組成

FSSC22000の取得に向けて、組織によってさまざまなアプローチの仕方がありますが、一例として、推進組織を立ち上げ、認証取得までのプランを練っていく方法を紹介します。

  1. 推進組織の役割
    推進組織の主な役割としては、次のように整理できます。
    • FSSC22000の認証取得までの計画の策定と進捗管理
    • FSSC22000で求められる要求事項に対する自社の現状に対する評価と課題の抽出
    本組織の役割はあくまでも認証取得であり、実際にFSSC22000の要求事項に沿った各種取組を実行していく組織(食品安全チーム等。次号詳細を説明します)とは、その役割が異なることに留意が必要です。

  2. 推進組織のメンバー
    経営トップは、本組織のリーダーを指名します。上記のとおり本取組は全社一体となって進めていく必要があることから、リーダーは、全社の各種取組を横断的に理解し、関係者に対して適切なコミュニケーションをとりうる者が望ましいといえます。このリーダーにより、推進組織のメンバーが選出されることになりますが、FSSC22000のスムーズな取得のためには、関連する各部門からメンバーが選出されることが望まれます。その際、各部門において十分な専門性や経験を有した人物を選出するとよいでしょう。

  3. キックオフミーティングの開催
    推進組織が組成されたら、キックオフミーティングを開催します。このミーティングは、認証取得に向けた推進組織内の足並みを揃えることを目的とし、推進組織メンバーにおけるFSSC22000の要求事項の理解、認証取得までの役割分担、TODOやスケジュール等の確認を行います。

③ FSSC22000認証取得までの計画作成

推進組織においては、まず、FSSC22000の認証取得に向けた計画を策定します。計画策定にあたっては、自社内外の状況等を踏まえた認証取得の時期を設定した上で、各ステップの実施時期を設定していきます。このステップについてはさまざまな考え方がありますが、一般的には以下のような流れになります。

  1. 要求事項に対する自社の取組状況等の評価
  2. 現状評価結果に基づく要求事項に沿った体制整備
  3. 当該体制を運用するための規程・マニュアル類の整備
  4. 整備した規程・マニュアル等の周知
  5. 実際の運用
  6. 運用結果の検証・改善

ここで定めた計画が認証取得のための重要な土台となるため、計画の内容に無理がないか、ボトルネックになりそうな箇所はどこか、マイルストーンをどのように設定するか、などを入念に吟味しながら策定することが重要です。認証取得は上述のとおり全社的に進めていくことになるので、推進組織において計画策定後、経営トップの承認を得たうえで、全社に共有しておくことが望ましいといえます。

④ 要求事項に対する自社の取組状況等の評価

FSSC22000の要求事項に基づいて現状の自社の取組状況を評価し、認証取得に向けた課題とその解決策等を明らかにします。具体的には、次のような図表を作成して整理し、関係者に共有するとよいでしょう。

本図表は、一番左の列に、「FSSC22000の要求事項」を転記したうえで、その隣の列に「要求事項に対するあるべき姿(取組内容)」として、自社の業態や事業規模等に鑑み、以下の3つの観点から、要求事項の実装や履行するために必要な事項等を洗い出します。

    1. 仕組み・ルール:いつ・だれが・何を・どのように実装や履行、記録等をするのか、その計画や実施手順等の規則
    2. 文書化 :仕組み・ルールを明文化したマニュアル類や記録フォーム等
    3. 運用 :仕組み・ルールに則り、実施、維持・更新する取組

「要求事項に対するあるべき姿(取組内容)」として整理した各項目の現状について、文書類の精査やヒアリング等により確認し、その結果を「現状の取組状況」の欄に記載します。そのうえで、現場での履行状況や文書有無の充足度を評価し、〇・△・×のような形で「評価結果」に記載します。

当該評価を踏まえて、次列「今後の取組案・解決策」では、「要求事項に対するあるべき姿(取組内容)」と「現状の取組状況」との乖離を埋めるための実施事項や解決策を起案します。その際、自社の経営資源に鑑み、可能であれば、ベスト/ベター案を起案します(例えば、食品防御対策の課題に対して、脆弱性評価は確実に実施するものの、防犯カメラの設置が理想(ベスト)だが、施錠の徹底や服装等によるアクセス制限で代替する(ベター)等)。

最後に、「今後の取組案・解決策」の「優先度」を決定します。優先度は、時間軸や限られた経営資源に鑑み、法令遵守や認証取得までの間に発生しうる食品安全上の問題等の可能性も勘案し、以下のように整理します。

    • A:仕組み・ルールがなく、または不備が多数あり、食品安全が担保できない可能性が否定できないため、早急に実施する。
    • B:現行の取組により、ある程度安全性が担保できるため、スケジュール中盤までに実施する。
    • C:一定の運用後に見直しや修正すればよいのでスケジュール終盤で実施する。
    • -:評価結果が「○」であり、現状の取組で要求事項を満たしている。

    以上、この記事では、FSSC22000 認証取得に向けた準備工程を中心に解説しました。

    ※本記事は、2020年9月1日発行のMS&AD InterRisk Report・PLレポート「第3回 FSSC22000の認証取得に向けた準備」を再編集したものです。

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