コンサルタントコラム

ISSB、次期テーマに自然と人的資本を選定

2024.6.21

国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は、2024年4月23日に、サステナビリティ開示基準の次期トピックとして、「自然資本(生物多様性、生態系、生態系サービス)」および「人的資本」領域におけるリスクと機会の情報開示に関する研究プロジェクトを開始すると発表した。ISSBは昨年、自然資本、人的資本、人権の3つを研究テーマ候補に挙げて意見募集を行ったが、その結果を受けて最終的に2つに絞り込んだことになる。今回、対象から外れた「人権」分野については、引き続き注視するとしている。

この研究プロジェクトは、自然資本および人的資本に関連するリスクと機会が企業の将来の見通しにどのように影響を及ぼす可能性があるかを評価する、投資家の一般的な情報ニーズに焦点を当てている。本プロジェクトを進めるにあたり、TNFDなどの関連する既存の開示枠組みを活用することも検討する。

2023年6月に公表された最初のISSB基準は、サステナビリティ全般の情報開示基準であるIFRS S1と気候変動に絞ったテーマ別開示基準であるIFRS S2で構成されている。IFRS S1は、企業が気候変動以外の情報開示を行うために、SASB基準などの他の情報源を参照することを求めている。ISSBは本研究プロジェクトを通じて、現行基準であるIFRS S1下での自然資本および人的資本関連の情報開示の限界を見極め、可能な解決策を特定し、これら領域に特化した基準策定が必要かどうかの判断を進める。

2024年6月には、ISSBは今後2年間の作業計画を公表する予定である。いずれにせよ本研究プロジェクトの結果、次期ISSB基準(IFRS S3)として自然資本、人的資本の開示基準が開発されることが想定される。一方、IFRS S2がTCFDをベースとして構築されたように、自然資本の開示基準が開発されるとしても、すでに公表されているTNFDと共通する部分が多いと予想される。そのため、企業は次期ISSB基準が公表されるまで行動しないのではなく、TNFDに沿ってできるところから検討を始めることが期待される。


【参考情報】
2024年4月23日付 IFRS HP:
https://www.ifrs.org/news-and-events/news/2024/04/~

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この記事は「ESGリスクトピックス2024年度 No.3」(2024年6月発行)の掲載内容から抜粋しています。
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