コンサルタントコラム

経済産業省が重大製品事故の発生状況を踏まえた新たな表示制度を検討中

2024.7.1

経済産業省は2024年3月18日、製品安全小委員会において2023年までの重大製品事故の件数を公表するとともに、考えられる要因とそれに向けた今後の施策を示しました。

消費生活用製品の製造事業者または輸入事業者は、自らが製造・輸入する消費生活用製品について重大製品事故が生じたことを知ったときは、10日以内に消費者庁に報告する義務を負っています(消費生活用製品安全法35条1項および2項)。

製品安全小委員会の資料によると、こうした義務に基づき、2023年に報告された重大製品事故の件数は1,186件となっており、2022年比で163件の増加となりました(図1)。また、2019年以降、毎年1,000件を超える重大製品事故が報告されています。

図1 重大製品事故件数の推移(2014年~2023年)(1)

一方で、同小委員会の資料では、重大製品事故の発生要因としては「製品起因」がもっとも多く31%を占める一方、「誤使用・不注意等」が29%となっています(図2)。

図2 重大製品事故の事故原因(2021年)(2)

また、「製品起因」と「誤使用・不注意等」の事故割合を年代別にみると、10代以下の若年層、60代以上の高齢層においては「誤使用・不注意」が占める割合が多いこともわかっています(図3)。特に、高齢層に関しては、年代が上がるにつれ「誤使用・不注意」が占める割合が多くなる傾向がみられます。

図3 製品起因と誤使用・不注意等の事故割合(2020年~2022年)(3)

こうしたデータを踏まえ、経済産業省では「誤使用・不注意による事故リスク低減製品への表示制度」(以下、新表示制度)の検討を進めています。

新表示制度は、JIS規格などの既存規格で本質安全や安全防護での保護が要求されていない残留リスク(誤使用・不注意)に対しての防止機能(基本安全設計の付加機能)を評価し、要件を満たす製品にリスク低減を謳った表示を認めるものです。

申請製品に求められる要件としては、①製品全体として本質的な安全性が担保されていること 、②特定の誤使用・不注意による製品事故リスクが低減されていること、が挙げられています。

経済産業省としては、本表示制度を通じて、リスク低減のための付加機能がスタンダードとして一般化すること、消費者が製品に存在する誤使用・不注意のリスクを意識することを期待しています。

新表示制度は令和7年度からの運用開始を予定しており、今年度は引き続き制度の詳細設計が行われるとのことです。引き続き今後の動向が注目されます。

出典: 経済産業省「第14回 産業構造審議会 保安・消費生活用製品安全分科会 製品安全小委員会」
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/~
1)第14回製品安全小委員会、資料1「製品安全行政を巡る動向」P5より
2)3)第14回製品安全小委員会、資料1「製品安全行政を巡る動向」P31より

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この記事は「PLレポート(製品安全)<2024年6月号>」(2024年6月発行)の掲載内容から抜粋しています。
PLレポート全文はこちらからご覧いただけます。
https://rm-navi.com/search/item/1720

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