劇場・音楽堂等における大規模地震発生時の対応と備え 「災害リスク情報(第97号)」
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2024.7.5
ポイント
- 劇場・音楽堂等は、建物構造上、複雑で危険性の高い舞台装置等を有しているため、大規模地震発生時のリスクは多岐にわたる。
- 緊急事態発生時には、職員の適切かつ迅速な対応が求められ、対応が遅れるほど来場者の混乱等の甚大な二次被害を招く。
- 本稿では、地震発生時の初動対応や事前の備えについて概説する。自施設の対策状況の検討、見直しのきっかけとしていただきたい。
1. 劇場・音楽堂等における地震リスク
日本は自然条件より、地震や台風等による自然災害が発生しやすい国である。特に地震は日本全国で発生しており、2023年には震度1以上の地震が2,227回観測された。また、首都直下地震や南海トラフ巨大地震等は、今後高い確率での発生が予想され、甚大な人的、物的被害をもたらすと想定されている。
劇場・音楽堂等は、建物構造上、複雑で危険性が高い舞台装置等を有しているため、地震発生時のリスクは多岐にわたる。地震発生時に生じる被害の例として、2016年熊本地震において熊本県内の劇場で生じた被害事例の一部を表1、表2に示す。2011年に発生した東日本大震災では、ライフラインの断絶やエレベーターの閉じ込め、消防用設備の誤作動による浸水等の被害が発生した。劇場・音楽堂等には、昼夜問わず様々な属性の来場者が集まるため、多くの来場者が訪れる時間帯に大規模地震が発生する可能性が十分に高い。さらに、大規模災害時には長期に渡って公共交通機関が停止する可能性が高く、過去には帰宅困難者対応や避難所の対応に追われた施設も多い。
【表1】2016年熊本地震で劇場等に生じた被害事例(熊本県立劇場)
【表2】2016年熊本地震で劇場等に生じた被害事例(益城町文化会館)
2.地震発生後の初動対応
大規模地震の発生時には、職員の適切かつ迅速な対応が求められる。対応が遅れるほど、来場者の混乱等、甚大な二次被害を招く。施設側は発災 直後の対応事項を事前にとりまとめ、対応事項に基づく役割分担を行う必要がある。特に、公演中に地震による強い揺れが起きた場合に備えて…
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