欧州委員会、Safety Gateの2023年報告書を公表
2024.7.8
欧州委員会(以下、EC)は2024年3月14日、Safety Gate EUにおける食品を除く危険な製品の緊急警告システム、旧RAPEX)に関する2023年の年次報告書を公表しました。
本報告書から、Safety Gateを通じた警告通知の分析や、関連するEUの活動について抜粋します。
1.警告通知に関する分析
- 通知件数
2023年にSafety Gateに通知された件数は3,412件であり、過去最高となった(図1、以降の図は本報告書に基づき弊社で作成)。これは、市場において危険な製品が増加したことを意味するものではなく、EU加盟各国の行政当局が市場監視を強化したことによるものである。
- 通知件数の多い製品群と危害の種類
通知された件数を製品種別に見ると、過去数年とは異なり、最も多かったのは化粧品(全体の32%)であった。続いて玩具(同13%)、自動車(同12%)、家電製品(同10%)、衣料品(同8%)となっている(図2)。
化粧品が最多となったのは、REACH規則の改正にともない、規制化学物質を含む化粧品に対する監視が強化されたためである。
リスクの種類についても、化粧品の監視が強化されたことで化学物質に関係するものが最も多く(45%)なっている(図3)。警告通知がされた化粧品のほとんどに、2022年3月1日より規制の対象となった BMHCA(1)が含まれていると報告されている。また、電子機器や玩具、アクセサリー等に関しても、鉛やPFAS(2)等の禁止化学物質に関する警告通知が発出されている。
2.2023年の主な活動
- EU各国との協調活動
EU単一市場プログラムの予算から製品安全に関して市場監視を担っている域内各国当局に資金提供を行っており、製品の共同テストやベストプラクティス等の知見の共有などを行っている。2023年は、玩具(磁石付きのもの、玩具に用いられる化学物質)、ベビーカー、家電製品(空気清浄機、旅行用アダプター)、衛生用品に焦点を当て、市場での調査を行った。 - インターネットで販売される製品に対する取組み
ネット販売される製品の安全性については、引き続き優先事項として取り組んだ。2023年3月には、従来の製品安全誓約3の改訂版である製品安全誓約プラス(Product Safety Pledge+)を導入し、これに署名したオンラインマーケットプレイス運営事業者は、20の自主的な取組に対するコミットメントについて再確認を行った。 - EU域外を含めた国際協力
2023年の安全でない製品の原産国は、例年と異なりEU域内製が39%と最も多くなった(図4)。これは、化粧品に関する警告通知が非常に多かったためと考えられる。化粧品を除く警告通知の約半数(52%)は中国産製品であり、これは例年とほぼ同じ水準であった。
中国との間では、2023年9月に署名が行われたネット販売される製品の安全に関する行動計画に、ネット上で販売される危険な製品に対する措置を21日以内に報告するという合意が盛り込まれた。
米国との間では、2022年に始まった米国消費者製品安全委員会(Consumer Products Safety Commission CPSC)との非公式対話が継続され、両者共通の関心事項に関する意見交換や、中国事業者向けの合同研修の準備作業等が行われた。
また、カナダ保健省とも緊密に連携しており、欧州のSafety GateとカナダのRADARデータベースとの間の情報交換や、ネット市場の調査に関するベストプラクティスの情報交換などを行っている。
(報告書の抜粋終わり)
Safety Gateの報告書は毎年この時期に公開されています。関連する事業者は、製品安全に係る欧州の活動や欧州各国政府の当局が注視している事項などに注目し、製品安全に関する体制や取組の見直しにつなげていくことが求められます。
出典: 欧州委員会(EC)の発表
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/~
1)2-(4- tert-ブチルベンジル) プロピオンアルデヒド。化粧品に広く使用されている合成香料であり、生殖系に影響を与え、皮膚感作を引き起こす可能性があるとされる。
2)有機フッ素化合物のうち、ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物の総称。薬品に強い等の特徴から様々な製品に活用されている一方、一部の種類は体外に排出されにくく健康に悪影響を与えやすいとされる。
3)製品の安全性確保に関し、オンラインマーケットプレイス運営事業者が自主的な取組を誓約するもの。
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この記事は「PLレポート(製品安全)<2024年6月号>」(2024年6月発行)の掲載内容から抜粋しています。
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