フリーランス・事業者間取引適正化等法の施行に向けた関係政令等の公表
2024.7.30
2024年5月31日、特定受託事業者に関する取引の適正化等に関する法律(以下、「フリーランス・事業者間取引適正化等法」という)の施行に向けた政省令や指針等が公表された。
2024年11月1日に施行されるフリーランス・事業者間取引適正化等法は、フリーランス(特定受託事業者(1))と発注者間の取引の適正化と、フリーランスの就業環境整備の2つの柱で構成されており、フリーランスに業務を委託する発注者は、今般公表された政省令等を踏まえた対応が求められる。本法律で定められている発注者の義務を以下のとおり整理した。
目的 | 発注者の義務 | 具体的な内容 |
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フリーランス・発注者間の取引の適正化 | 書面等による取引条件の明示 | 業務委託をした場合、書面等により、直ちに、次の取引条件を明示すること
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報酬支払期日の設定・期日内の支払 | 発注した物品等を受け取った日から数えて60日以内のできる限り早い日に報酬支払期日を設定し、期日内に報酬を支払うこと | |
禁止行為 | フリーランスに対し、1ヵ月以上の業務委託をした場合、次の7つの行為をしてはならないこと
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フリーランスの就業環境の整備 | 募集情報の的確表示 | 広告などにフリーランスの募集に関する情報を掲載する場合、次の措置を講じること
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育児介護等と業務の両立に対する配慮 | 6ヵ月以上の業務委託について、フリーランスが育児や介護などと業務を両立できるよう、フリーランスの申出に応じて必要な配慮をしなければならないこと
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ハラスメント対策に係る体制整備 | フリーランスに対するハラスメント行為に関し、次の措置を講じること
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中途解除等の事前予告・理由開示 | 6ヵ月以上の業務委託を中途解除したり、更新しないこととしたりする場合、次の措置を講じること
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公表資料に基づきMS&ADインターリスク総研が整理
フリーランス・発注者間の取引の適正化に関しては、発注者に対し、取引条件の明示義務、60日以内の報酬支払義務(再委託の場合は30日以内)、報酬減額や買いたたきの禁止といった、下請代金支払遅延等防止法(以下、「下請法」という)と同様の規制を定めるものである。既に下請法対応を行っている事業者においては、同様の対応をフリーランスとの業務委託においても適用し、適切に運用していくよう、社内における周知や管理を実施することが求められる。
フリーランスの就業環境の整備に関しては、フリーランスとの関係が委託関係であり「社外の取引先」であることから、留意する必要がある。例えば、ハラスメント対策に係る体制整備においては、合理的な理由なく従業員保護を優先することが生じないよう、フリーランスからの相談に対応する際の客観性・公平性の確保や、相談したことにより業務委託を解除するなどの不利益取扱いの発生の防止がポイントとなる。それらへの対策として、社外相談窓口の設置や、事案対応後に業務委託の解除を行う場合における管理部門での事前チェック等が考えられる。
フリーランスとの取引が見込まれる事業者は、既存の社内体制の活用にあたり、今回示された関係政省令や指針等を踏まえ、現行体制における課題や対応すべき事項を洗い出し、本法律の施行までに適切な準備を進めることが求められる。
1)本法律における「特定受託事業者」とは、業務委託の相手方である事業者であって従業員を使用しないものをいう。
【参考情報】
2024年5月31日付 公正取引委員会HP:
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2024~
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この記事は「ESGリスクトピックス2024年度 No.4」(2024年7月発行)の掲載内容から抜粋しています。
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