レポート

大規模洪水から被害を避ける「霞堤」に係る意識調査 「リサーチ・レター (2024 No.3)」

2024.8.1

気候変動の影響によって、年々、激甚災害が発生するなか、とりわけ河川の氾濫が大きな被害を及ぼしている。こうした状況を踏まえた対策を講じる必要があるところ、護岸やダム建設といった従来の河川上だけでなく、河川以外での対策として、「霞堤」、すなわち、流域全体で水を貯めたり、地中に浸透させたりする方策について、河川流域居住者の認識ないし意識についてアンケート調査をした。

1.アンケート調査の方法

(1) 調査期間

2023年12月8日(金)~14日(木)

(2) 調査対象者(回答者;合計1,000名)

まず、①愛媛県および②熊本県の河川流域居住者、ついで、③高知県などを対象として(図表1)、性別・年代別に各100名の回答を得た(図表2)。

【図表1】アンケート調査対象

年齢 15才以上
居住地 ①愛媛県の河川流域エリア1 松山市、今治市、宇和島市、八幡浜市、新居浜市、西条市、大洲市、伊予市、四国中央市、東温市、久万高原町、砥部町、内子町、松野町、鬼北町、愛南町
②熊本県の河川流域エリア2 八代市、人吉市、葦北郡芦北町、球磨郡錦町、球磨郡多良木町、球磨郡湯前町、球磨郡水上村、球磨郡球磨村、球磨郡あさぎり町
③高知県・長崎県・佐賀県・山口県・福岡県3の全域 高知、長崎、佐賀、山口、福岡の順に優先的にサンプル回収した。

(3) 回答者の属性

①「性年代別均等割付」によったため、以下の1,000名となった。

【図表2】回答者の性別

20歳代以下 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代以上
男性 100名 100名 100名 100名 100名
女性 100名 100名 100名 100名 100名

1 人口は、120万人強である。
2 人口は、約21万人である。
3 2022年の台風14号にて、災害救助法の対象となった市町村を含む県である。

② 地域は県別に以下のとおり(図表3)、愛媛県と熊本県の差は対象流域の人口比によるところが大きい。

【図表3】県別内訳

「あなたのご自宅から最も近くの河川はどちらになりますか」との問いに対して、重信川4(愛媛県)が過半を占め、次いで肱川5 (愛媛県)、球磨川6 (熊本県)となっている(図表4)

【図44】最寄りの河川

4 かつて、伊予川と呼ばれ大雨のたびに氾濫を繰り返していた。そこで、初代松山道後温泉城主加藤嘉明(よしあきら)が、家臣の足立重信に命じ、重信川の改修にあたらせた。重信は、霞堤や鎌投という水制などの工法を用い、堤防を強化して、巧みに氾濫を食い止め、周辺に新田を増やした。
5 河口部が山に挟まれた狭窄部になっていて河床勾配が緩やかであるという特徴から、洪水が中流の盆地に集中しやすい地形になっている。この地形状況から、大雨が降るたびに川が氾濫し水害が発生していた。このため、藩政時代から、堤防の築堤や河道内の掘削など河道整備を進めるとともに、水番を置いて肱川の水位を観測していた。その水位観測記録は今も残っており、貴重な資料となっている。
6 「日本三大急流」のひとつ、治水と利水をめぐって展開してきた。水田稲作農業を主軸とするところでは、農業用水の開発を中心とする利水が先行し、昔の治水事業の顕著なものは、およそ利水事業と相伴ったものが多くなっている。流域沿岸で開田や利水事業が積極的に実施されるようになったのは、人吉に相良氏が入った西暦1200 年頃からで極めて古く、このとき開いた土地や領主の城館を洪水から防護するため、局部的に築堤、護岸、水制等が施工された。

ここまでお読みいただきありがとうございます。
以下のボタンをクリックしていただくとPDFにて全文をお読みいただけます(無料の会員登録が必要です)。

会員登録で レポートを全て見る