自然関連の企業評価スコアを公表、WBAが世界800社超を対象に実施
2024.10.7
ワールドベンチマークアライアンス(WBA)は2024年8月7日、企業の自然関連の取り組み状況を評価する「2022-2024 自然ベンチマーク(Nature Benchmark)」を発表した。
WBAは2018年に国連財団、英保険会社のAviva、NGOのIndex Initiativeにより設立され、企業のSDGs達成状況を評価するために、「自然」「気候とエネルギー」「食料と農業」「社会」などの7つの分野に関するベンチマーク指標を開発し、その評価結果を公開している。自然ベンチマークは2022年に方法論等が開示され、2023年には農業と食品セクターの企業評価の結果が公表された。それに引き続き、今回は業種および企業が大幅に追加され、20業種816社(うち日系企業72社)が対象となった。
同団体のベンチマーク開発においては、SBTN、GRI、WWF、WBCSD、TNFDなどをはじめとして100近くの組織からフィードバックが提供されている。評価対象企業は、WBAの設定する5つの基準により「キーストーンカンパニー」として特定されたものであり、例えば「特定のセクターにおいて世界の生産収入や生産量を支配しているかどうか」、「世界的なガバナンスのプロセスと制度に影響力を持つかどうか」、「特に発展途上国において世界的なフットプリントを有しているかどうか」といったものが含まれる。
本ベンチマークは25の自然ベンチマーク指標と18の中核的社会指標から構成されており、それぞれの配点に従って100点満点で評価される。自然ベンチマーク指標は「ガバナンスと戦略」、「生態系と生物多様性」、「社会的包括性とコミュニティへのインパクト」の三つの要素から構成される。なお、中核的社会指標は総スコアの20%を占めており、残りの80%の配点は残る25指標に均等に配分されている。各指標は下表に示すとおりであり、指標それぞれについて、評価要素(Elements)が四つから五つ設定されている。本ベンチマークによる評価は2022年から開始していることから、TNFD開示が本格化する前に評価された企業も存在するため、現時点では企業がTNFD開示の必要性に迫られる前にどの程度の取り組みができていたかを評価したものといえる。
今回の結果を受けてWBAは、自社の事業が自然に与えるインパクトを評価している企業はわずか5%で、さらに自然への依存を評価している企業は1%に満たなかったとし、企業が自然に対する行動を戦略的に管理するために必要な行動がとられていない状況とした。また先住民族と地域コミュニティ(IPLC)の権利を尊重しているという明確なコミットメントを表明している企業は、評価対象企業の13%未満に過ぎないとし、企業にはIPLCからFPIC(Free, Prior and Informed Consent)※1を得ることを約束しなければならないと言及した。他にも、排出する水質汚濁物質やプラスチックの定量的な削減目標を設定している企業の少なさ、生物多様性や気候分野に精通した
人材を取締役に任用している企業がわずか2%に留まるといったことが指摘されている。
自然ベンチマークの指標
今回の発表は「第一サイクル」として設定されており、これから「第二サイクル」に入ることが言及されている。2024年内に予定されている方法論アップデートを経て、2026年には第二サイクル目の評価結果が発表される予定。また2026年の発表の際は、海洋の生態系にインパクトを与える水産業を含む少なくとも100社について、海洋生態系の損失を食い止め、再生させることに貢献しているかどうかもベンチマークに組み込み評価を行うとしている。
自然関連の情報開示は特に扱う対象が広く、どういった情報の開示が求められているのかわかりにくいという声も多い。本ベンチマークのような企業評価はこれ自体が、開示において優先的に求められている情報を理解するツールになる。企業はまず、できる範囲から自社が持つ自然との接点を把握し、自然にどのようなインパクトを与え、どのように依存しているかを特定することが求められる。
【参考情報】
2024年8月7日付 World Benchmarking Alliance HP:
https://www.worldbenchmarkingalliance.org/news/nature-benchmark-press-release-2024/
1)FPIC(Free, Prior and Informed Consent)
自由意思による、事前の、十分な情報提供に基づく同意のこと。企業が当該の土地を開発したり、そこから資源を採取したりする際には、IPLCなどのステークホルダーに対してこのプロセスを踏むことが求められる。
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この記事は「ESGリスクトピックス2024年度 No.7」(2024年10月発行)の掲載内容から抜粋しています。
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