10月開幕の生物多様性COP16、目標達成へ各国取り組みのモニタリング強化を協議
2024.10.9
生物多様性条約締約国会議(COP16)が、2024年10月21日から11月1日までの日程で、南米コロンビアの都市カリで開催される。世界目標の着実な達成に向け、各国の取り組み状況の進捗確認を厳格化する仕組みづくりなどの議題に注目が集まる。
同会議は、おおむね2年ごと開催。前回のCOP15(2022年12月)では開催地にちなんで30年までの世界目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)」を採択。「30by30」※1、「ネイチャーポジティブ」※2などのキーワードが誕生した。
今回のCOP16では次のような注目すべき議題がある。
- COP15採択のGBFにおける各国の実施状況の点検
- GBFと各国が策定する「生物多様性国家戦略および行動計画」(NBSAPs:National Biodiversity Strategies and Action Plans)との整合性の確認
- GBFのモニタリング制度「レビューメカニズム」の構築の確認
- 生物の遺伝資源のデジタル配列情報の共有
「レビューメカニズム」の構築では、GBFの達成に向けた各国の取り組みをモニタリング・評価の仕組みづくりを協議する。各国には、国別報告書を提出するだけでなく、戦略に基づく着実な実行と目標達成を求める点が特徴。目標年20年・50年の愛知目標が、目標達成状況の把握や評価が不十分でほとんどの締約国が達成できなかった反省に基づくものだ。各国はCOP16にあたって、GBFを反映した生物多様性の国家戦略を策定し、会議事務局に提出しなければならない。各国の国家戦略は、COP16 閉幕後に統合・分析される予定。加えて、各国は次回COP17(26年予定)開催前に、取り組み状況などをまとめた「報告書」を提出する。それらがCOP17で「グローバルレビュー」として、世界規模での新枠組の進捗状況が評価される予定だ。
なお、日本では、政府が23年3月に「生物多様性国家戦略2023-2030」を閣議決定。5つの基本戦略と、戦略ごとの15個の状態目標、25の行動目標で構成する。行動目標ごとに関係省庁による367個の具体的施策も定められている。これらほぼすべての施策に目標値と現状値が示されており、進捗の確認※3が可能だ。
また、「生物遺伝資源のデジタル配列情報の共有」も注目のテーマだ。一般的に先進国が解析技術や情報を多く保有し、発展途上国は「遺伝資源」は保有していても、「遺伝資源のデジタル配列情報」を共有することが少ない。今回はデジタル配列情報も共有の対象として検討の俎上に載せる点に新規性がある。同情報は製薬など多くのビジネスを創出するため、生物多様性条約上で重要な「遺伝資源の利用から生ずる利益の公平で平衡な配分(ABS)」の観点から、先進国と途上国との間にある大きな不公平を是正するのが目的。同条約は、遺伝資源を「植物、動物、微生物、その他に由来する素材のうち、現実のまたは潜在的な価値をもつもの」と定義し、水や土壌のサンプルも含む。
【参考情報】環境省HP:
https://www.env.go.jp/press/press_03269.html
1)30by30:「昆明・モントリオール生物多様性枠組」2030年グローバルターゲットの一つで、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする目標
2)ネイチャーポジティブ:自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させること
3)生物多様性国家戦略2023-2030第2部行動計画第1章<具体的施策>
https://www.env.go.jp/content/000124381.pdf
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この記事は「ESGリスクトピックス2024年度 No.7」(2024年10月発行)の掲載内容から抜粋しています。
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