コラム/トピックス

国内におけるAIに関する議論の整理

2024.10.25

昨今、AIが急速な発展と普及を遂げ、それに伴い、規制や国際的な枠組みの検討が進んでいる。
グローバルな視点では、2023年6月のG7広島サミットにおいて、「AIの可能性を活用するために、包摂性を促進する国際的なAIガバナンスの形成が必要」との共通認識が示されている。

しかしながら、AIガバナンスに対するアプローチがG7各国間で異なる可能性があり、相互運用性の向上力強化が課題である。加えて、今後G7以外の国や組織も含めて、国際的なAIガバナンスを広げていくことも必要になる。

また、各国でも検討が進んでいる。EUでは2024年3月に世界で初めてとなる生成AIを含むAI規制となるAI法案が可決され、リスクベースで禁止事項や要求事項、義務が定められた。米国でも、AI研究を主導することを目的とした2020年国家AIイニシアチブ法の策定や、社会がAIから利益を享受しつつ潜在的な危害から保護されることを目的としたAIリスクマネジメントフレームワークの策定が行われている。

国内でもAIで懸念されるリスクに対しての考察や、それらに対する規制や画一的な枠組み作りに向けた議論が進められている。AIが与える影響や法的権利・利益、その他様々な観点から議論され、関係省庁から各種ガイドライン、調査報告等が公表されている。

発行年月 資料名 概要
2019年3月 人間中心のAI社会原則(内閣府)※1
  • 基本理念やビジョンを策定
  • 人間中心のAI社会原則に基づき、AI の研究開発や社会実装において考慮すべき問題を検討
2023年6月 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等(個人情報保護委員会)※2
  • 生成AIサービス利用時の個人情報に関する注意喚起
  • 個人情報取扱事業者、行政機関等生成AIを提供する事業者、利用者が留意すべきポイント(習得した個人情報の利用目的外で使わないように留意する等)を集約
2024年3月 AIと著作権に関する考え方について(文化庁)※3
  • 生成AIと著作権に関する考え方を整理
  • クリエイター等の権利者や生成AIを提供する事業者、生成AIの利用者向けに、生成AIの技術的な背景や懸念点(著作物等がAI 開発・学習に無断で利用されている等)を検討
2024年4月 AI事業者ガイドライン(経済産業省・総務省)※4
  • 生成AIの開発者・提供者・利用者向けに、生成AIに関する留意点や遵守すべき事項(プライバシー侵害への対応等)について整理
2024年5月 AI時代の知的財産権検討会中間とりまとめ(内閣府)※5
  • 生成AIと知的財産権をめぐる懸念・リスクへの対応と課題、今後の発明の保護の在り方(発明者や特許審査の考え方等)について整理
2024年5月 AI戦略の課題と対応(内閣府)※6
  • 生成AIに関する論点と関係省庁等における対応、国際的な動向(諸外国における取組や国際的なルール作りについての日本の取組等)を整理
2024年7月 コンテンツ産業における先端的技術活用に関する調査 事業報告書(経済産業省)※7
  • コンテンツ産業における生成AIと著作権や知的財産権の懸念・リスク、対応等を整理
  • ゲーム、アニメ、広告等のコンテンツ産業に携わる者向けに、コンテンツ制作における生成AIの適切な利活用の方向性を明示
2024年9月 AIセーフティに関する評価観点ガイド(独立行政法人情報処理推進機構)※8
  • AIシステムの開発者や提供者が安全性や公平性、透明性等が確保されているかの評価を行う際に参照できる基本的な考え方を整理
2024年9月 デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会とりまとめ(総務省)※9
  • 偽・誤情報の流通・拡散等のリスク、それをもたらすアテンション・エコノミー等の構造的リスクに対し、情報流通の健全性確保に必要な「総合的な対策」を提言

生成AIの普及により、ビジネスでの利用機会が増大する一方で、本技術が短期間で飛躍的に進歩しており、対応する規制等も、国内だけを見ても上表のとおり、従来とは比較にならないほど急速かつ広範囲で検討が進み、今後この傾向は続くものと推測される。企業においては、これらの規制等を適時適切に自社の仕組み・ルールに反映し、周知徹底を図る仕組みを検討していくことが肝要といえよう。

1)https://www8.cao.go.jp/cstp/ai/aigensoku.pdf
2)https://www.ppc.go.jp/files/pdf/230602_kouhou_houdou.pdf
3)https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/bunkakai/69/pdf/94022801_01.pdf
4)https://www.meti.go.jp/press/2024/04/20240419004/20240419004-1.pdf
5)https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/chitekizaisan2024/0528_ai.pdf
6)https://www8.cao.go.jp/cstp///ai/ai_senryaku/9kai/shiryo1-1.pdf
7)https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/contents/ai_houkokusyo_set.pdf
8)https://aisi.go.jp/2024/09/18/evaluation_perspectives/
9)https://www.soumu.go.jp/main_content/000966997.pdf

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この記事は「ESGリスクトピックス2024年度 No.7」(2024年10月発行)の掲載内容から抜粋しています。
ESGリスクトピックス全文はこちらからご覧いただけます。
https://rm-navi.com/search/item/1889

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