SBTs for Nature 海洋域の目標設定ガイダンス(草案)に対する意見公募を開始
2024.11.11
2024年10月9日、45以上の組織で構成される国際非営利団体のThe Science Based Targets Network(SBTN)は、海洋域の目標設定ガイダンス(草案)(以下、「海洋版草案」)に対する意見公募を10月22日まで実施すると発表した。意見公募を経て、第1版(v1.0)は2025年中に発表される予定である。
SBTNは企業向けの自然に関する科学的根拠に基づく目標設定枠組み「Science Based Targets for Nature(SBTs for Nature)」のガイダンス・ツール類を順次開発し、企業が策定した目標の認定も試行している。
SBTs for Natureは企業およびそのバリューチェーンの自然に対する依存とインパクトについて、「Step.1 分析と評価」「Step.2 結果の理解と優先順位づけ」「Step.3 計測、目標設定と情報開示」「Step.4 計画の策定と行動」「Step.5 進捗状況の追跡」の5ステップで目標設定を促す枠組みである。2024年7月にStep.1および2の統合ガイダンス(v1.1)、Step.3のうち淡水(v1.1)と陸域(v1.0)の目標設定ガイダンスが公表されている。
海洋版草案ではStep.3を検討する前に、淡水、陸域、海洋域に関わらず実施する共通プロセス(Step.1および2)を実施し、企業およびそのバリューチェーンの自然に対する依存とインパクトを評価する必要がある。
Step. 1(分析と評価)では目標設定のために企業が自然へのインパクトの大きい活動(事業)を特定する方法が示されており、企業はそれに従って評価を行う必要がある。
Step.2(結果の理解と優先順位づけ)では、Step.1の評価結果を踏まえ、実際に目標設定すべき課題や場所の絞り込みを行う。絞り込みは事業拠点の地理情報を用い、圧力指標と自然の状態指標から優先的に対応すべき拠点を洗い出すことが求められている(図1)。
<図1:「自然への圧力」と「生物多様性」の評価から優先順位付けを行う概念図>
今回公表されたStep.3(計測、目標設定と情報開示)の海洋版草案は、まずは水産部門(商業漁業、養殖業)に焦点を当てており、将来的に海上輸送や沿岸・海洋観光、海洋における再生可能エネルギー、沿岸開発などの部門へも拡大していく予定としている。目標設定は大きく3つに分かれている。目標の1つ目である「過剰漁獲の回避・削減」は商業漁業を対象としている。企業が過剰に漁獲された資源から得られる商品への依存を避け、海域や管轄区域で漁業条件を改善し、過剰漁獲を削減するための目標を設定する。2つ目の「海洋生態系の保護」は商業漁業と養殖業を対象としている。企業が海洋環境と養殖環境において、現存している生息地(サンゴ礁や海藻など)への影響を回避および軽減するための目標を設定する。3つ目の「漁業の影響から絶滅危惧種・保護種(ETP種)を保護」は、商業漁業を対象としている。商業漁業は不特定の野生生物を混獲するため、ETP種への配慮が足りない。こうした影響に対処するための目標を設定する。
現在公表されている、陸地・淡水の目標設定に関するガイダンスに加え、海洋も追加になることで、企業はこれまで以上に自然に関する知識や社内の協力、リソースの確保を含めた体制の強化が必要となるであろう。また、TNFD(自然関連情報開示タスクフォース)が提示するLEAPアプローチの「Prepare(対応・報告への準備)」プロセスでは、企業が自然関連の目標を設定する際に、SBTs for Natureの方法論を参考にすることを推奨している。今後、水産業の企業が自然関連の情報開示および目標設定を検討する企業は両フレームワークを参考にし、推進していくことが望ましい。
【参考情報】参考情報:2024年10月9日付 Science Based Targets Network HP:
https://sciencebasedtargetsnetwork.org/news~
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この記事は「ESGリスクトピックス2024年度 No.8」(2024年11月発行)の掲載内容から抜粋しています。
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