コラム/トピックス

AIが健康管理や投資戦略を立案する!? 生成AIの驚異的な進化と将来の姿とは

[このコラムを書いた研究員]

土居英一
専門領域
倫理、AI
役職名
マネジャー上席研究員
執筆者名
土居 英一 Eiichi Doi,Ph.D.

2024.12.6

この記事の
流れ
  • これまでの生成AIの驚異的な進化
  • 生成AIの今後の進化
  • 最新の基礎技術動向例
  • 生成AIの進化にキャッチアップするノウハウとは?
  • 生成AIの未来とその可能性

AIがあなたの健康を管理し、投資の戦略を立案してくれるようになる!? こんなSF映画のような世界が実現するのはそう遠くないかもしれません。
今、生成AIは、私たちの生活やビジネスに大きな影響を与えていて、驚異的な進化を続けています。そんな状況に追いつけていないと感じている人もおられるでしょう。
そこで、この記事は、生成AIの進化の現状や、各AIの得意分野などを整理するだけでなく、今後の進化の方向性や最新の技術動向についても、わかりやすく解説します。
また、企業の競争力を維持するために、生成AIの進化にどうキャッチアップするかのポイントもお伝えします。

これまでの生成AIの驚異的な進化

生成AIは、言語、画像、音声など多様な分野で急速に進化し、特に大規模言語モデルの開発によって加速しました。OpenAIの最新モデルGPT-4oやGoogleのGemini1.5Proは、膨大なデータを学習し、自然な対話や文章作成、コード生成などで人間に近い成果を上げています。例えば、GPT-4oは、音声、視覚、テキストをリアルタイムで処理するマルチモーダルな能力を持ち※1、多言語対応を含め新たな高水準を達成しています。以下に、その他の分野の例も紹介します。

生成AI
  1. 画像生成分野:DALL-E3やMidjourneyV6.1が実力の高いモデルですが、例えばMidjourneyV6.1は、画像の一貫性や品質が向上し、前モデルに比べて生成速度も約25%高速化されています。
  2. 音声生成・認識分野:GoogleのAudioLMは生成AIによるものと判別困難な音声を生成できます。また、OpenAIのWhisperはかなり高い精度の音声認識を実現し、文字起こしや音声翻訳にて活用が進んでいます。
  3. 動画生成分野:OpenAIのSoraがテキストから高品質な動画を生成する技術を開発しており、教育や広告、エンターテインメント等の分野での応用が期待されています。また、Haiperも動画生成技術の開発を進めており、最新バージョンのHaiper2.0では、2秒から4秒の短い動画を高速かつ高品質に生成する機能が追加されています。

これらの技術の進化は、ビジネスや日常生活における効率化や創造性の向上に寄与しています。例えば、企業は生成AIを活用して、顧客対応の自動化やマーケティングコンテンツの生成、製品デザインのプロトタイピングなど、多様な分野での応用を進めています。

生成AIの今後の進化

今後、生成AIはさらに高度な進化を遂げると予測されています。ここでは、マルチモーダルAIとAIエージェントを紹介します。

  1. マルチモーダルAI:テキスト、画像、音声、動画を統合的に理解し、生成するAIで、開発や利用が進みつつあるAIです。今後は、このようなテキスト、画像、音声、動画を統合して処理する能力が向上するでしょう。例えば、教育分野では教科書の内容を映像化し、インタラクティブに学習を支援するシステムが実現すると考えられます。また、エンターテインメント分野では、ユーザーの物語のアイディアを瞬時に映像化し、個別にカスタマイズされたコンテンツを提供できるようになるでしょう。
  2. AIエージェント:ユーザーの指示に応じて自律的にタスクを遂行するAIです。例えば、旅行の計画を立てる際、ユーザーの好みや予算に合わせたプランを提案できるAIエージェントは概ね実現しています。今後は、AIエージェントが過去の行動データや嗜好を学習し、家事、健康管理、各種手続きなどの複雑なタスクを自動で最適化し、実行することが期待されます。現存する各種業務の自動化にも寄与するでしょう。

最新の基礎技術動向例

生成AIの驚異的な進化を支える基礎技術として、以下の3つの分野が鍵を握っています。

  1. 大規模言語モデルの進化:GPT-4oのような大規模言語モデルそのものや、ChatGPTのような大規模言語モデルを活用したサービスの性能向上などが、生成AIの高度化を支えています。特に、近年のモデルは、膨大なデータを使用してトレーニングされ、多言語対応や文脈理解力が強化されています。
  2. 自己教師あり学習:生成AIが膨大なデータから効率的に学習するための技術です。自己教師あり学習により、AIはラベルなしのデータから自らルールを見出し、未知のデータにも柔軟に対応する能力が向上しています。
  3. ニューラルネットワークのアーキテクチャ改善:アーキテクチャの改善(例:現在の多くの生成AIのベースとなっているトランスフォーマーモデルの改良版)は、計算効率を高めつつ精度を向上させます。

これらの技術の進展により、生成AIはますます高度なタスクを遂行できるようになります。例えば、医療分野では、患者の症状や検査結果をもとに診断や治療計画を提案するAIシステムが開発されています。また、金融分野では、マーケットの動向を分析し、投資戦略を立案するAIが活用されています。今後はさらに目を見張るような新しいサービスの開発が進むでしょう。

生成AIの進化にキャッチアップするノウハウとは?

生成AIの進化を追い、実際のビジネスや業務に適応するには、以下の3つの手法が有効です。

  1. 技術の常時キャッチアップ:学術論文、技術関連ネット情報収集や、技術展示会参加等を通じて、生成AIに関する最新情報を定期的に入手します。
  2. ハンズオン実習:実際に生成AIを用いたプロジェクトに取り組み、生成AIの出力結果を観察し、チューニングを繰り返すことで、AIの特性を理解します。
  3. 実用化シミュレーション:ビジネス環境で生成AIを導入する前に、テストプロジェクトを実施し、AIの出力や効果を検証することで、本番運用時の課題を事前に把握します。

これらの手法を通じて、企業は生成AIの導入の準備を整えることができ、より効果的に生成AIの進化に適応することができます。生成AIの進化はスピーディであり、継続的にキャッチアップすることが企業の競争力を維持するために不可欠です。

生成AIの未来とその可能性

生成AIの進化は私たちの生活やビジネスを一変させる可能性を秘めています。特に、ビジネスの世界では、顧客対応の自動化、マーケティングの強化、製品開発の支援など、多様な分野での応用が進むでしょう。これにより、企業は新たな価値を提供し、競争優位を築くことが期待されます。

生成AIがビジネスを一変させる可能性も

生成AIの進化は、私たちの未来を創り上げることに深くかかわるでしょう。そして、その進化に対応し続けることが、持続的な成長と新たなビジネス機会を生み出す鍵となります。

1)複数のデータ形式を統合して理解・生成できるAIをマルチモーダルAIという。

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