コラム/トピックス

CBD-COP16が閉幕 国際目標のモニタリング指標や資源動員戦略は時間切れで採択見送り

2024.12.11

2024年10月21日からコロンビア・カリで開催されていた国連生物多様性条約16回締約国会議(CBD-COP16)が閉幕予定日を1日過ぎた11月2日に休会という形で閉幕した。2030年までに生物多様性の損失を止め反転させるための世界目標であるグローバル生物多様性枠組(GBF)の実施加速に向けた議論が行われたものの、複数の議題で交渉が難航し、本会合での採択に至らなかった。

本会合では生物遺伝資源のデジタル配列情報(DSI)の使用に係る便益配分に関する多国間メカニズム、生物多様性条約第8条(j)項に基づく先住民族および地域コミュニティ(IPLC)の参画に関する補助機関会合の設立、GBFの進捗を測るモニタリング指標やレビューの仕組みなどが議論された。本会合の成果として、IPLCの自然保護活動に対する役割の強化、生物遺伝資源のDSIから得られる便益を共有する新たな多国間メカニズムとして「カリ基金」の創設が採択されたことが挙げられる。

一方で議題7(事務局予算)、議題10(GBF指標・レビューメカニズム)、議題11(資源動員)などで審議が中断となり、採択を持ち越す形となった。議題10については、23項目に及ぶGBFのターゲットのモニタリング指標が定まることで、その達成に向けた各国の取り組みの進捗状況や今後の進め方が明確になることが期待されていた。指標については作業部会で議論が行われ、具体的な評価方法がおおむね決定しているものの、本会議の休会により採択には至らなかった。なお、保留されている議題について採択を図る特別会合の開催情報も発表されることなく、本会合は閉幕している。

196のCBD締約国のうち、GBFに基づく「生物多様性国家戦略および国家計画(NBSAP)」を提出しているのは日本を含む44か国に留まっており、締約国の中でもGBFへの姿勢には温度差があるといえる。またGBFの実行に必要な資金などの資源動員を目的とするガイダンスとして、資源動員戦略フェーズII(2025-2030)等が議論されたが、締約国間の意見の隔たりは大きく、資金動員戦略の採択は見送りとなった。

生物遺伝資源のDSIの利用から生じる便益の公平な配分については、「すべてのDSI 利用者が恩恵を共有することが望ましい」との方向性が確認された。製薬、バイオテクノロジーなどのDSIを利用して多大な利益を得る大企業に対して、利益の一部を新たに創設される「カリ基金」に拠出することを奨励するという内容で採択に至った。

企業は、本会合の採択項目が今後自社のビジネスにどのような影響を及ぼすか分析することが望ましい。また保留となったGBFのモニタリング指標は、企業の自然関連財務情報開示において指標や目標を検討する際に参考になると考えられるため、採択前の状況であっても内容を確認しておくとよいだろう。

【参考情報】
CBD-COP16 HP
https://www.cbd.int/article/agreement-reached-cop-16

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