コラム/トピックス

国連ビジネスと人権フォーラムが開催、人権保護への法律・ソフトロー併用が注目集める

2025.1.9

国連ビジネスと人権フォーラムが11月25日から27日にかけて、スイス・ジュネーヴで開催された。今回は、法令による規制と法的根拠に基づかない「ソフトロー」の併用で企業に人権保護を求める「スマート・ミックス」の実現が最も注目されるテーマに挙がった。

本フォーラムは国連が毎年開催しており、今回が13回目。会場参加者は主催者発表で過去最高の156か国約3,000人で、ウェブ参加を含めた総数は4,000人に上った。国連関係者によると、アジア太平洋地域からの参加者が増え、日本からの参加も過去最高だった。会期中は3つの会議室でセッションが同時並行で開催された。

主要テーマに挙がった「スマート・ミックス」は2011年公表の「国連ビジネスと人権に関する指導原則」ですでに使われていた用語。法令で義務化された枠組みと法的拘束力のないガイドラインなどに沿った企業の自主的な取り組みの組み合わせで人権課題の解決を図る概念を指す。欧州の企業サステナビリティ報告指令(CSRD)および企業サステナビリティ・デューディリジェンス指令(CSDDD)など「ハードロー」の整備・執行が進む現状を反映し、国際機関や当局など規制を設ける側とそれを受けて社内体制整備に奔走する企業らとの間で意見交換が熱を帯びた。例えば、国連のファシリテーターが「人権に配慮した経済の確立が喫緊の課題」として、強制力を伴う規制や枠組みの重要性を強調。それに対して、欧州域内の中小企業や第三国の企業などが、要求水準の高い法規制対応ができなかった場合の取引停止や、それで生じる現地人権状況のさらなる悪化などについて懸念の声を挙げた。また、法令や規則に過度に反応し本質を見失う「オーバーコンプライアンス」も指摘された。

また、本フォーラムの開催が、気候変動枠組条約締約国会議(COP29)がアゼルバイジャンで開催された翌週だったこともあって、「気候変動と人権」のテーマも関心を集めた。COP29と同様、先進国と途上国との対立やその中で企業が取るべき実効的アクションのベストプラクティスについて議論が白熱した。また、人権侵害対策のための企業によるエンゲージメントのあり方も議論された。

【参考情報】
2024年12月6日付 国連人権高等弁務官事務所HP
https://www.ohchr.org/en/stories/2024/12/business-and-human-rights-adopting-smart-mix

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