生物多様性COP16で、グローバル見据えたクレジット市場のフレームワーク案が公表
2025.1.10
英仏両政府が主導する「生物多様性に関する国際アドバイザリーパネル(IAPB)」は2024年10月28日、コロンビア・カリで開催中の生物多様性条約締約国会議(COP16)で、生物多様性クレジット市場の新たなフレームワーク案を公表した。対象となる自然資本の価値をクレジット化して経済的な価格を示すことが目的。これまでの生物多様性クレジットの制度づくりでは、対象の国や地域が限定されるのが通常だが、このフレームワークは、当初からグローバルな運用を目指し2か国が共同で制度設計にあたった点は珍しく、COP16 でも注目された。
フレームワーク案の検討には、金融、学識者、NGO、先住民族、地域コミュニティなど幅広い領域から参加、出身国は25か国を超えた。
市場参加者にとって信頼性の高いクレジットとなるため、①自然を厳密に検証できる方法で計測する ②人々にとって公正・公平である ③市場関係者のための優れたガバナンスがある――ことを3つの方針に掲げ、それらに関する項目の指針を定めた。
<表1 フレームワークの概要>
(出典:IAPBフレームワークに基づきMS&ADインターリスク総研が抄訳)
先行して制度化が進むカーボンクレジットは、対象の二酸化炭素などに地域の違いや区別はなく地球上のどこでも共通する。一方で、生物多様性の場合、地域性や同一性が重視されるため、遠く離れた生物多様性上の関連性のない地域間や国境を越えたクレジットの取引きは行わない前提だ。また、一度取り引きされた以降の二次市場的な取り引きを行わないことも明記した。併せて、オーストラリアやブラジルなどの5か国のクレジットの開発状況も併せて調査。ほとんどの国が、開発中か運用を始めた段階となっている。各国が今後、オフセットやクレジットの制度を個別に開発する際、原則やルールの見直しにあたっては、本フレームワーク案が参照される見込みだ。
<表2 生物多様性クレジットの枠組みの新たな状況>
(出典:IAPBフレームワークに基づきMS&ADインターリスク総研が抄訳)
なお、COP16では、このフレームワーク案に関連し、NGOなどが生物多様性オフセットやクレジットが生物多様性の破壊やグリーンウォッシュを助長する可能性を主張する場面もあった。
【参考情報】
2024年10月18日付 IAPBリリース
https://www.iapbiocredits.org/framework
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この記事は「ESGリスクトピックス2024年度 No.10」(2025年1月発行)の掲載内容から抜粋しています。
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