
PSIRTとは?基本情報と役割をわかりやすく解説
2025.2.21
スマート家電、遠隔医療などあらゆるものがインターネットにつながるIoT時代となりました。利便性が高まる一方で、サイバー攻撃の脅威は、もはやITシステムのみにとどまらずネットワークに接続されるすべての機器に及びます。
そこで、製品のセキュリティを守る「砦」として、PSIRT(Product Security Incident Response Team)への注目度が高まっています。 PSIRTは、製品の開発から運用までの全ライフサイクルでセキュリティリスクを管理し、企業と顧客をサイバー攻撃から守ります。

この記事では、PSIRTの必要性が高まっている背景、役割、業務内容、そしてCSIRTとの違いや連携について詳しく解説します。 さらに、PSIRTを効果的に構築・運用するためのポイントをご紹介します。
PSIRTとは?
PSIRT(Product Security Incident Response Team)とは何かを解説するために、以下の3項目に分けて説明します。
- 製品のセキュリティを専門に扱うチーム
- 開発部門とは独立した組織で活動
- PSIRTとCSIRTの違い
製品のセキュリティを専門に扱うチーム
PSIRTは、製品やサービスのセキュリティに特化したチームです。
具体的には、製品の脆弱性に関する情報の収集・分析、セキュリティインシデントへの対応、顧客に対するセキュリティサポートの提供といった業務を行います。製品の安全性を確保するため、PSIRTは日々、脆弱性の発見や修正を行い、顧客に安心して使用してもらえる環境を提供しています。
またPSIRTは脆弱性の修正だけではなく、顧客からのフィードバックや市場の動向を踏まえたセキュリティ改善策の提供も行い、製品の信頼性を向上させる役割も担っています。
開発部門とは独立した組織で活動
PSIRTは通常、開発部門から独立して活動します。この独立性により、製品開発のスピードやスケジュールに左右されることなく、製品のセキュリティ向上に専念することができます。
開発部門では、新機能の追加やリリース期限に追われることもあり、セキュリティ対策が後回しになることがあります。PSIRTは状況に関わらずセキュリティを重視した開発部門とは異なる視点で製品の安全性を確保します。
この独立した活動により、企業は製品のセキュリティリスクを最適化し、信頼性の高い製品を提供できます。
PSIRTとCSIRTの違い
PSIRTとCSIRT(Computer Security Incident Response Team)は、共にセキュリティインシデントへの対応を行いますが、その対象や目的は異なります。
PSIRTは、先述の通り自社製品やサービスのセキュリティに特化したチームであり、製品の脆弱性に関する情報収集や修正を担当します。
一方、CSIRTは企業全体のシステムやネットワークの安全性を確保するために活動します。これにより、PSIRTは製品のセキュリティ、CSIRTは企業のシステム全体のセキュリティを守るという役割分担がなされています。
ただし、企業の運用状況によっては、業務の兼務や重複することもあり厳格に切り分けられていないケースもあります。
PSIRTが必要とされる背景
PSIRTのニーズが高まる背景をいくつかのポイントに分けて、解説します。
IoT機器の増加による脅威
あらゆる機器がネットワーク接続されIoT化が進むことにより、ハードウェアや機器が攻撃の対象となるリスクが高まっています。
例えば、自動車や医療機器などの機器がハッキングされた場合、重大な安全性の問題が発生するリスクがあります。これらの製品には、OSS(オープンソースソフトウェア)が多く利用されるケースがあり、脆弱性が発見される可能性もあります。
あまたあるIoT機器やそこに使われるソフトウェアに対する攻撃に対応できる環境が整っていなければ安全性の高いサービス提供ができません。
脆弱性の早期発見と対応の重要性
先述したIoT機器を通じたサービスへのサイバー攻撃は、影響範囲も広く、また安全性において重大な被害をもたらすリスクを孕んでいます。外部からの攻撃により企業の信頼が失われるだけでなく、顧客に対して深刻な被害を与える可能性もあります。
PSIRTは、製品のライフサイクル全体を通じてセキュリティリスクを管理し未然に防ぐと同時に、発生したインシデントに対して迅速かつ効率的に対応することで、被害を最小限に抑えます。
PSIRTの主な業務と活動内容
PSIRTは、自社製品やサービスに対するセキュリティリスクの管理を専門に行うチームです。製品のセキュリティを強化するための活動は多岐にわたり、製品の脆弱性の特定から、インシデント対応、顧客支援、開発部門へのフィードバックまでさまざまな業務を担当します。ここでは、PSIRTが行う主な業務について詳しく解説します。
製品の脆弱性に関する情報収集・分析
PSIRTの最も重要な業務のひとつが、自社製品に潜む脆弱性に関する情報を収集・分析することです。インターネット上の公開データベースやセキュリティコミュニティ、ベンダーから提供される情報、内部のセキュリティ監査など、さまざまなソースから情報を取得します。
収集した脆弱性情報は分析され、緊急性や影響度が評価されます。緊急性の高い脆弱性が見つかった場合には、PSIRTは開発部門に対して修正やパッチの適用を指示し、顧客に対しても適切な注意喚起を行います。この情報収集と分析のプロセスによりインシデントの発生リスクを制限することで、製品のセキュリティが確保されます。
セキュリティインシデントへの対応
セキュリティインシデントが発生した場合、PSIRTは迅速かつ適切な対応を求められます。
製品に脆弱性が見つかり、悪意のある攻撃が仕掛けられた場合、PSIRTはインシデントの詳細を調査し、被害を最小限に抑えるための対策を講じます。
具体的なインシデント対応は、速やかな修正パッチの提供や、影響を受けるシステムの隔離、さらには顧客や関係者への説明や情報提供などです。迅速な対応により、被害の最小化、及び企業のブランドイメージの保護と顧客の信頼を維持することが可能です。
顧客へのセキュリティサポート提供
PSIRTは、セキュリティインシデントの発生時だけでなく、日常的に顧客へのセキュリティサポートも提供します。脆弱性に関するパッチの提供や、製品に関連するセキュリティ対策の支援などです。顧客がセキュリティ問題に直面した際、PSIRTは問題の解決をサポートし、顧客に安心して製品を使用してもらえるようにする役割を担っています。
また、顧客に対して定期的なセキュリティアップデートや脆弱性に関する通知を行うことで、製品使用中のリスクを軽減し、顧客満足度を向上させます。
PSIRTの組織における位置づけと連携
PSIRTは、製品のセキュリティ対応を専門に行うチームであり、企業の組織体制の中でも重要な役割を担っています。PSIRTの配置方法は企業ごとに異なりますが、主に事業部門ごとに設置される場合と、全社的な統括組織として設置される場合があります。
事業部門ごとのPSIRT配置
多くの企業では、製品ごとに対応するため、各事業部門にPSIRTを設置するケースがあります。この場合、PSIRTは各事業部のニーズに応じて運営され、製品開発や顧客サポートと密接に連携しながら、特定の製品やサービスに対するセキュリティ対応を行います。事業部門内にPSIRTを配置することで、製品ごとの特徴に合わせた迅速な対応が可能です。
全社的なPSIRT配置
一方、全社的なPSIRTを配置する企業では、専任スタッフが事業部門とは別に配置され、全社規模でのセキュリティリスクを管理します。このような統括的なPSIRTは、製品全体のセキュリティポリシーやガイドラインの策定、各事業部門へのセキュリティサポートの提供など、広範囲にわたる業務を担当します。
全社的なPSIRTが存在することで、各事業部門間でのセキュリティ対応のばらつきを防ぎ、一貫したセキュリティ基準を確保することが可能です。全社レベルでのセキュリティインシデントに対しても、統一した対応が可能となり、セキュリティインシデントの影響を最小限に抑えられます。
連携の重要性
PSIRTが効果的に機能するためには、事業部門や他のセキュリティチームとの緊密な連携が欠かせません。特に、CSIRTやIT部門との協力が重要です。CSIRTは自社のITインフラやネットワークに関連するセキュリティインシデントを担当するため、PSIRTと連携することで、製品のセキュリティとシステム全体のセキュリティを包括的に守れます。
開発部門との連携も不可欠です。PSIRTは、製品の脆弱性やセキュリティリスクに関する情報を開発部門にフィードバックし、必要な対策を講じるように指示します。連携を通じて、製品の安全性を確保し、顧客に対して安全で信頼性の高い製品を提供することが可能です。
PSIRTの構築方法
ここでは、PSIRTの構築方法について、具体的なステップと要点を解説します。
組織体制の整備
PSIRTを機能させるためには、専門的な知識とスキルを持つメンバーでチームを編成する必要があります。まず、チームを統括するリーダーを決定し、その下にセキュリティアナリスト、インシデント対応の専門家、開発チームとの連携役など、必要なスキルを持つメンバーを配置します。
このチーム編成においては、製品に対する深い知識だけでなく、最新のセキュリティリスクに対応できる専門知識や迅速なインシデント対応能力が必要です。組織内での横断的なコミュニケーションができる体制を整えることも、PSIRTの活動を成功させるためには欠かせません。
インシデント対応のプロセスを決める
PSIRTの活動において、セキュリティインシデントが発生した際の対応プロセスを明確にしておくことは非常に重要です。主なステップとしては、以下の点が挙げられます。
ステップ | 実施する内容 |
---|---|
1.脆弱性の収集と分析 | 製品に関連する脆弱性情報を収集し、その脆弱性がもたらすリスクや影響を評価する |
2.影響範囲の特定 | 脆弱性がどの範囲に影響を及ぼすかを特定し、インシデント対応の優先順位を決定する |
3.対策の実施 | 開発部門や運用部門と連携し、必要なセキュリティパッチの適用やシステムの修正を行う |
4.情報の開示 | 顧客や関係者に対して脆弱性や対応策について適切な情報を提供し、信頼性を維持する |
このようにプロセスを明確にしておくことで、インシデント発生時に迅速で効果的な対応が可能になります。
製品開発プロセスへセキュリティ対策を組み込む
PSIRTが単に脆弱性に対応するだけでなく、製品やサービスの開発段階からセキュリティを考慮することが、強固なセキュリティ体制を確立するために欠かせません。製品の設計や開発プロセスの各段階でセキュリティリスクを考慮し、リリース前に脆弱性管理がなされるようプロセスを設計しましょう。
必要なツールと技術
PSIRTの活動を支えるためには、適切なツールと技術の導入が欠かせません。導入が推奨されるツールとしては、次のようなものがあります。
ツール | 詳細 |
---|---|
脅威分析ツール | 製品開発初期にリスクを洗い出し、対策を立てるために使用するツール |
脆弱性診断ツール | 製品の脆弱性をシミュレーションして発見するツール |
技術 | 詳細 |
---|---|
セキュリティ設計技術 | セキュアコーディングや静的解析を使い、脆弱性を防ぐ仕組みを作る技術 |
セキュリティ検証 | 市場に出る前にセキュリティ対策が機能しているか確認する |
これらのツールや技術を効果的に活用することで、PSIRTは脆弱性管理やインシデント対応をスムーズに行え、セキュリティ対策の強化に貢献します。
ASM(Attack Surface Management)とPSIRT
ASM(Attack Surface Management)は、企業が外部からの攻撃にさらされる可能性のある領域を管理するための手法であり、PSIRTの活動においても非常に有効なツールです。PSIRTの主要な業務の一つである製品の脆弱性管理を支援し、セキュリティインシデントへの対応をより効率的かつ効果的に行うために、ASMは活用できます。
具体的には、以下のような業務に活用できます。
- 脆弱性の早期発見
- インシデント対応の効率化
- リスクの継続的監視と管理
ASMを活用することで、PSIRTは製品のセキュリティを強化し、攻撃面の管理をより包括的に行えます。
ASMツールについて詳しく知りたい方は以下の記事もご参照ください
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まとめ
PSIRTは、製品やサービスのセキュリティを強化し、インシデント発生時に迅速かつ適切に対応するために欠かせない組織です。しかし、PSIRTの役割はインシデント対応にとどまらず、製品やサービスの開発段階からセキュリティを考慮し、リスクを未然に防ぐ仕組みを作ることにもあります。セキュリティは、単なる事後対応ではなく、企業の製品開発プロセス全体に組み込まれるべき要素であり、その中心的な役割を担うのがPSIRTです。
PSIRTを構築することで、企業はセキュリティリスクを軽減し、ブランドの信頼を守りながら、長期的な事業の継続性を確保することが可能となります。