
GPIFが「優れたTCFD開示」5社を公表、主要事業ごとの詳細開示などが高評価
2025.3.14
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は2025年1月27日、国内株式の運用を委託する19 機関が「優れた TCFD 開示」に選定した44 社を公表した。また、4機関以上から高い評価を得た5社として、商船三井、伊藤忠商事、アサヒグループホールディングス、日立製作所、三菱UFJフィナンシャル・グループを挙げた。主要事業ごとのリスク・機会の分かりやすい開示や、気候と自然の双方の財務影響を統合した開示などが高評価を得た。
高評価を得た企業のうち、商船三井は自社資産の入れ替えに向けた投資計画や、低炭素事業拡大に向けたサプライチェーンの構築など、保有する事業の戦略と一体となった気候変動対応を詳細に開示。他に、貨物セグメント単位のGHG 削減ロードマップや、2050年までの移行計画など、バックキャスティングの観点から分かりやすい情報開示を行っている点が評価された。
一方、伊藤忠商事は、8つある事業セグメントについて「調達」「事業運営」「市場需要」の観点からリスク・機会を分析。シナリオ分析ではプラス・マイナスの双方の影響を提示するだけでなく、各事業にもたらす財務インパクトや、対象事業が属するセグメントの利益や総資産額も掲載することで、投資家側が気候変動に伴う影響と財務への影響を結び付けて推察できるよう工夫。複数の事業領域を抱える企業として、各事業に関連するリスク・機会の分析結果を詳細かつ分かりやすい形で、投資家へ提供している点が評価された。
アサヒグループホールディングスはTNFDとTCFDを統合したシナリオ分析を実施し、シナリオ発生確率や財務インパクト、対応策などを詳細に記載。サプライチェーンに由来する影響分析を含め包括的かつ金額により定量的に開示している点が評価された。
優れた企業の選定は初回の2021年度から今年で4回目。運用機関と投資先企業間の建設的な対話(エンゲージメント)の実現に向け、対話の前提となる企業側の情報開示のベストプラクティスを選定・公表するのが目的だ。
参考情報:2025年1月27日付 年金積立金管理運用独立行政法人HP
https://www.gpif.go.jp/esg-stw/202501_excellent_TCFD_disclosure_j.pdf