コラム/トピックス

経産省、産業データの越境・国際流通に係るデータ管理の指針示す

2025.4.21

経済産業省は2025年1月、「産業データの越境データ管理等に関するマニュアル」を発行した。本マニュアルは、企業における安全・安心な形でのデータ共有・利活用を実現し、付加価値の創出を促進することを目的として、企業における産業データの越境・国際流通に係るデータ管理の指針を示すものである。

IoTやDXの普及、サプライチェーン透明化の要請等を背景とした企業における国際的なデータ共有・利活用の拡大に伴い、各国・地域においてデータに関する法整備も進められている。それらの中には、産業データの越境移転の制限や政府が産業データにアクセスすることを可能とする規則も存在している。

本マニュアルでは、これらの規制によって企業が抱える「他国・地域に保管しているデータに自由にアクセス・管理できない」「重要なデータ(機密性・権利)が守れない」「データが信頼できない」といったリスクを対象とした上で、①リスクの可視化、②リスクの評価、③打ち手の実施という3ステップに沿って、リスクに対する具体的な対応方法例を示している。また、関連ガイドラインの内容も参照し、取りまとめたものになっているため、実務面で参考になるものである。

 
マニュアル記載の概要は下記のとおりである。
項目 概要
対象データ データが国際的に共有・利活用される場面において取り扱われ得る産業データ全般で、パーソナルデータと非パーソナルデータを指す。それぞれの定義は以下のとおり。
  • パーソナルデータは、個人情報、仮名・匿名個人情報等、個人情報保護法の保護対象となるデータ
  • 非パーソナルデータは、安全保障関連データや営業データ、技術データ等、パーソナルデータに該当しないデータ
リスクの可視化 可視化にあたっての具体的な対応は以下のとおり。
  • 想定するデータの共有・利活用において、関連するステークホルダーおよびデータとその所在を整理する
  • 何のデータが、ライフサイクルのどの段階で、誰から誰に、どのような手段で共有されるかを整理する
  • データのロケーション、データの内容、データライフサイクルを踏まえ、「他国・地域に保管しているデータに自由にアクセス・管理できない」「重要データが守れない」等、想定されるリスクシナリオを整理する
リスクの評価 評価にあたっての具体的な対応は以下のとおり。
  • 可視化したリスクについて、対象となるデータやリスクの発生プロセスを確認する
  • 自社にとっての影響の大きさを評価し、対応の優先度を決める
打ち手の実施 モニタリング、リスク発生に備えた事前対応、リスク発生後の適切な事後対応が求められる。それぞれの例は以下のとおり。
  • モニタリングは「リスク発生の疑い・予兆の把握」「リスク発生の有無の把握」を行う
  • 自社や取引先のセキュリティ状況の把握
  • インシデント発生件数の把握
      
  • 事前対応は「リスク発生確率の低減・予防」「発生時のインパクトの低減」を行う
  • 従業員や取引先と秘密保持に関する契約の締結
  • システムごとにアクセス制限・制御の設定
  • 事後対応は「保護措置、責任追及」「再発の防止」を行う
  • 顧客、取引先等の主要ステークホルダーに対して通知・説明
  • 取引先へのデータ提供範囲・方法の見直しや、契約の見直し

(経済産業省「産業データの越境データ管理等に関するマニュアル」を基に当社にて作成)

産業データに関する議論や越境データ管理に焦点を当てた議論は始まったばかりであり、今後さらに、生じ得るリスクや具体的な対策の検討が蓄積されていくことが見込まれる。企業は、本マニュアルや関連ガイドラインを活用しつつ、今後も継続的に本分野における議論の動向をウォッチし、適宜しかるべき対策を検討していくことが求められる。

【参考情報】
2025年1月27日付 経済産業省HP:https://www.meti.go.jp/press/2024/01/20250127001/20250127001-1.pdf

会員登録でリスクマネジメントがさらに加速

会員だけが見られるリスクの最新情報や専門家のナレッジが盛りだくさん。
もう一つ上のリスクマネジメントを目指す方の強い味方になります。

  • 関心に合った最新情報がメールで届く!

  • 専門家によるレポートをダウンロードし放題!

  • お気に入りに登録していつでも見返せる。