
Biodiversity Credit Allianceがボランタリー生物多様性クレジットの審査メカニズムの検討を開始
2025.7.10
Biodiversity Credit Alliance(BCA)は、十全性の高いボランタリー生物多様性クレジット市場の形成を目指し、クレジット供給者側の審査メカニズムの構築に向けた検討がスコーピング段階に入ったと発表した。スコーピング段階では、これまでの検討成果を踏まえて審査メカニズムの構築に向けた具体的な方向性を定めていく作業に入るとしている。
BCAは国連開発計画(UNDP)と国連環境計画・金融イニシアチブ(UNEP FI)の支援により、生物多様性条約第15回締約国会議(CBD-COP15/2022年12月)期間中に設立。メンバーは研究者、保全に関わる実務者、ボランタリー生物多様性クレジット制度の検討主体などで構成されている。加えて、先住民と地域社会(IPLCs)により構成される会議体であるCommunity Adovisory Panel(CAP)も設立されており、一連の議論に参画している。
BCAが設立された目的は、十全性の高いボランタリー生物多様性クレジット市場を形成することである。十全性とは、透明性、信頼性、効率性などのボランタリー生物多様性クレジットの質を指す。BCAは、同目的の下、クレジット原則の策定や、市場参加者へクレジット原則に基づく行動を促すためのガイダンス策定等に取り組むとしている。
BCAのこれまでの検討成果として、生物多様性クレジットの定義、クレジット原則、アセスメントツールなどが公表されている。これらの一連の検討成果は、クレジットを創出・販売する供給者側の質や十全性を審査(Review)するメカニズムを構築することを目的に進めてきたものである。審査は、個別のプロジェクトによる取り組み成果をクレジットとして認証(Verification)するのではなく、クレジット認証機関が開発したプログラムや方法論に対して十全性を審査することを指している※1 。なお、同様のメカニズムとして、ボランタリーカーボンクレジット市場※2においては、The Integrity Council for Voluntary Carbon Markets(ICVCM)※3が、高品質なカーボンクレジット要件であるCore Carbon Principles(CCP)に適合するクレジットプログラムや方法論を評価している。
今回発表されたスコーピング段階の検討事項としては以下が挙げられている。
- 審査機関に必要な要件
- 十全性の高い市場を支えるために必要な審査項目
- 審査メカニズムの構造と必要なリソース
- 段階的・協調的・包括的なアプローチ
上記検討におけるポイントは、①標準化と柔軟性のバランス、②類似する他の資金メカニズムとの関係整理、③高度な専門知識を有する審査員の確保が挙げられると想定される。これらのポイントは、BCAが昨年公表した、既存の審査メカニズムのレビュー結果を取りまとめたレポート※1 において、審査メカニズムの検討における課題として挙げられた点である。
同レポートでは、需要側の理解が不足している点も指摘されている。この課題に対してBCAは、ボランタリー生物多様性クレジットの使用者に対して、クレジットの使用やその主張に関するガイダンスの作成も進めている。BCAによるクレジット供給者・使用者両面へのアプローチにより、ボランタリー生物多様性クレジット市場の十全性確保を促進していくことが期待される。
1)BCA(2024)Review Mechanisms for Supply-side Quality and Integrity in the Biodiversity Credit Matket
2)民間が主導するカーボンクレジットの取引市場のこと
3)https://icvcm.org/assessment-status/
【参考情報】
2025年6月6日付: https://www.linkedin.com/posts/biodiversity-credit-alliance_𝗧𝗵𝗶𝘀-𝗪𝗼𝗿𝗹𝗱-𝗘𝗻𝘃𝗶𝗿𝗼𝗻𝗺𝗲-activity-7336309012537176064-XJB8