コラム/トピックス

TOPIX構成企業の約3割がSSBJ基準の義務化前の開示を検討、GPIF調査

2025.7.14

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は2025年5月27日、「第10回機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果」を公表した。それによると、東証株価指数(TOPIX)構成企業の約3割が、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)基準の適用義務化に先立っての開示を予定・検討していることがわかった。同基準は、有価証券報告書でサステナビリティ情報を開示する際に対応が必要で、プライム上場企業の時価総額上位を対象に、最短で2027年3月期から適用が始まる予定だ。

一部開示を含めSSBJ基準の義務化前に開示を「予定」と回答したのは9.4%、「検討」(18.0%)と合わせると、義務化前の対応を考えている企業の合計は27.4%だった。時価総額別では、最初に適用が見込まれる「時価総額3兆円以上」(発行済株式数ベース、25年1月末時点)では「予定」の割合が最も高く13.0%で、「検討」を加えた合計は37.1%となっている。一方、適用時期が遅い「5,000億円以上1兆円未満」グループの「予定」と「検討」の合計は39.1%で、「3兆円以上」グループを上回った。なお、その中間の順番で義務化の見込みの「1兆円以上3兆円未満」は、「予定」と「検討」ともにどちらのグループよりも低かった。

<SSBJ開示の予定・検討状況>

SSBJ開示の予定・検討状況

出典:GPIF資料をもとにインタ総研作成

SSBJ開示に向けた具体的な取り組み状況(自由記述)では、非財務情報の開示における責任部署の明確化、SSBJ基準と自社の現状とのギャップの特定、対応のためのプロジェクトの立ち上げ予定などが挙がった。欧州連合(EU)のサステナビリティ開示基準である企業持続可能性報告指令(CSRD)や第三者保証への対応、非財務データ収集の体制整備についても関心が高かった。社内の負荷や経営陣の理解を得ることが難しいとして、サステナビリティ情報開示の必要性や意義の発信を機関投資家に対して求めるコメントもみられた。

前回調査(24年)に新設された自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)に関する質問では、同枠組みに沿った開示済の企業が10.3ポイント増の15.8%になった。「ガバナンス」や「戦略」など開示の4項目では、開示企業のうちガバナンスが対応できているとの回答(「十分」と「一部」の合計)が前回の80.7%から95.9%に上昇した。GPIFの指摘によると、4項目のうちガバナンスの開示を優先した対応は、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の開始時と同様の傾向だという。「指標と目標」は88.8%で、4項目の中で最も低いが前回の66.7%から大幅に増えた。

ESG活動の目的は「企業価値向上」の回答が大半を占めた。特に企業規模別で「大型(TOPIX100)」の企業は90%(前回は85%)が「企業価値向上」を目的の1位に挙げる一方、次点の「リスク低減効果」が3%(同4%)、「社会貢献」は1%(同5%)にとどまった。中型(TOPIX Mid400)」とそれら以外の「小型」の規模でも企業価値向上を最上位に挙げる傾向は同じだった。ESG活動における主要テーマを問う質問(複数回答)では、上位3テーマが「気候変動」「コーポレート・ガバナンス」「ダイバーシティ」の順で、前回と同様だった。今回は「サプライチェーン」が7位から5位に上昇したほか、25.5%の企業が新設の「人材開発」を選び8位となった。

同調査はTOPIX構成企業を対象に、投資家向け広報(IR)の状況や機関投資家との対話について問うもので、GPIFは16年から実施。アンケートでは企業のIRやESG活動のほか、機関投資家の現状・変化、GPIFの取り組みを質問している。

今回のアンケートは25年1月末時点のTOPIX構成企業1,696社が対象で、回答社数は37.3%の632社だった。東京証券取引所の市場再編に伴うTOPIX見直しのため、対象企業数は前回調査の2,154社から大幅に減ったが、回答率は前回(33.3%)から上昇した。

【参考情報】
2025年5月27 日付 年金積立金管理運用独立行政法人HP: https://www.gpif.go.jp/esg-stw/stewardship/stewardship_questionnaire_10.html

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