コラム/トピックス

中国が反外国制裁法の実施規定を公布

2025.7.17

2025年3月24日、中国国務院は「中華人民共和国反外国制裁法 」(以下「反外国制裁法」)の具体的な運用ルールを定めた「実施に関する規定」(以下「本規定」)を公布・施行した。この規定は、2021年に施行された同法の実効性を高めるものである。

反外国制裁法は、外国の個人または組織が中国の個人や企業に対して不当な制裁や差別的措置を講じた場合に、制裁リストに追加し、中国政府が報復措置を取ることを認める法律である。中国はこの法律によって、自国の主権、安全、経済的利益を守るとともに、対外的に対等な関係を主張する姿勢を明確にしてきた。これまでは制裁の内容や範囲が不明確であったが、今回の本規定により、報復措置の内容がより具体的に明文化された。

例えば、反外国制裁法では、制裁リストに載った外国の個人やその配偶者・直系親族、また、組織やその管理職、関係者などに対して、措置を講じることが可能とされ(反外国制裁法第5条)、措置の内容は以下のうち1つ、あるいは複数の措置を講じることが可能とされている。(反外国制裁法第6条)

  1. 査証を発行しない、入国禁止、査証取消、あるいは国外追放
  2. 中国国内にある動産、不動産やその他の各種財産の差し押さえ、押収、凍結
  3. 中国国内の組織、個人との関連取引、協力等の活動の禁止あるいは制限
  4. その他の必要な措置

本規定では、上記措置に関して具体的な内容が定められ、第二項の対象となる財産には、現金、銀行預金、有価証券、ファンド持分、知的財産権、売掛金などが含まれており、広範囲に及ぶとされた(本規定第7条)。また、第三項で制限される活動の分野も明文化され、教育、科学技術、法律サービス、環境保護、経済貿易、文化、観光、衛生、スポーツが含まれており、多岐にわたる領域で影響が生じる可能性がある(本規定第8条)ことが明示された。

さらに、本規定によれば、当該措置に従わない場合、中国政府が、政府調達・入札・それらに関連する物品や技術の輸出入または国際サービスに関する貿易活動、国外からのデータの受信や提供、出入国や中国内滞在などの禁止または制限を行う可能性があるとされている(本規定第13条)。

こうした中、中国で事業を展開する企業は、自社および関連先が制裁対象となるリスクを認識し、現地で活動する従業員にもそのリスクを十分に周知するなど、慎重な対応が求められる。また、欧米諸国の対中制裁や輸出管理規制に従った結果、その行為自体が中国から「差別的措置」と見なされ、制裁対象となるリスクも想定される。

中国での事業に直接関連しない企業であっても、サプライチェーン上の企業が制裁を受けた場合、間接的な影響により、事業活動が滞る可能性がある。中国の今後の反外国制裁法・本規定の運用動向に注視し、継続的な情報収集体制とリスクへの対応方針の検討・体制整備を行うことが望ましい。

※中華人民共和国反外国制裁法(2021年6月10日)
https://www.gov.cn/xinwen/2021-06/11/content_5616935.htm

【参考情報】
中国政府HP:https://www.gov.cn/zhengce/content/202503/content_7015400.htm

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