コラム/トピックス

「パパ育休」から考える両立支援のあり方

[このコラムを書いたコンサルタント]

専門領域
ワークライフバランス・両立支援/高齢者・リハビリテーション/調査研究/健康・健幸
役職名
リスクマネジメント第四部 健康経営サービスグループ テクニカルアドバイザー
執筆者名
大瀧 雅世 Masayo Otaki

2022.2.25

「パパ育休」への対応準備は整っているだろうか。育児・介護休業法が改正され、2022年4月から順次施行される。4月1日からは、育児休業を取得しやすい雇用環境の整備、妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の大きく2点が義務化される。

また、女性活躍推進法も時を同じくして改正され、2022年4月から順次施行される。常時雇用労働者が301名以上の企業において義務となっている一般事業主行動計画に数値目標を定めて策定する必要があり、 101名以上~300名の企業においては一般事業主行動計画の策定が努力義務から義務として課せられることになる。

では、なぜ「パパ育休」が制度化され、女性活躍推進法が改正されたのであろうか。女性に偏りがちな育児や家事の負担を夫婦で分かち合い、少子化や労働者不足といった社会問題を解決するとともに、女性活躍推進やジェンダー平等にもつながるからである。

育児・家事負担の男女差解消のための「パパ育休」であるが、一方で2つの大きな課題がある。1つ目は、男性が育児休業をとりにくいことである。法改正以前から既に制度として取り入れている企業もあろうが、国内の男性の育休取得率の平均は、2020年度に12.65%と初めて1割を超えたような状況である。その背景には、共働き世帯が専業主婦世帯の倍となった現在でも、男性より女性が育児を担う、育児は女性の方が得意、男性が育休をとる必要性を見いだせないといった社会の風潮、アンコンシャスバイアスが色濃く残っていることが挙げられる。そして2つ目は、取得した場合でも育児休業期間が短いことである。女性の育休取得期間は1年前後が約6割である一方、男性は2週間未満が約7割である。「男は仕事・女は家庭」という性別役割分担意識が変化しつつあるとはいっても、実態として業務上の制約や働き方に男女差が生じていることが挙げられ、制度が十分に活用しきれていない。

以上のような状況を踏まえて企業としてどのような対策が必要なのだろうか。ここでは、①組織内におけるアンコンシャスバイアスの解消、②男女問わず従業員の実態に合わせた制度の整備の2点を挙げたい。

①については、これまでの日本社会全体の性別役割分担意識によるところが大きいため、一朝一夕での変革が望めるものではない。まずは企業としてアンコンシャスバイアスについての研修を行い、グループディスカッションなどを通して気づきと理解を促す必要がある。そのような組織内での活動を積み重ねることで意識や行動の変化を生み出し、組織風土の改革をもたらすことが肝要である。

②については、今回の法制度化を機に「育休」の取得率の向上に取組む企業も増えるであろうが、同時に、従業員の真のニーズに耳を傾けることも重要である。男女問わず、仕事と家庭を両立するために必要な制度は法で定められた「育休」だけではない。たとえば、育児のために取得できる半休や時間休といった休暇の創設・拡充やテレワーク等の利用拡大など、多様な人材がそれぞれの意思を尊重して働けるような制度、環境構築が望まれる。

このように各企業において組織風土を改革しつつ、従業員のニーズに耳を傾けながら多様な働き方ができる制度を整備していくことで、社会的気運の醸成にもつながることが期待される。

以上

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