
「インバウンド 求められる安全対策 ~レンタカー需要の増加と運転トラブル削減の取組み~」
[このコラムを書いたコンサルタント]

- 専門領域
- インバウンド、避難マップ
- 役職名
- 新領域開発室 業務アドバイザー
- 執筆者名
- 長谷川 厚子 Atsuko Hasegawa
2018.9.28
2017年の訪日外国人数は2,869万人となり、5年連続で過去最高を更新。その消費額は4兆円を超える。政府は東京五輪・パラリンピックが開かれる2020年の目標値を訪日外国人旅行者数4,000万人、旅行消費額8兆円と掲げ、受入れ環境の整備を促進、自治体や事業者においてはさまざまなプロモーションを実施している。
近年日本を訪れる外国人旅行者は、従来の団体ツアーから、友人や家族との個人旅行へと旅行形態が変化しており、また、滞在中は買い物よりも、日本文化などの体験を楽しんだり、日本古来の神社仏閣を訪れたりと、モノからコト消費への需要が広がっている。
こうした背景から、外国人旅行者は都市部だけにとどまらず、地方を訪れる旅行者が増加している。その交通手段としては、公共交通機関から、より自由度の高い、レンタカー、バス、タクシーなどを利用する旅行者がここ数年急増している。
なかでも、レンタカー利用者は5年間で4倍に増加。特に欧米人は長期滞在型の旅行が多く、消費単価が高くなることが期待できるため、レンタカー事業者はその獲得に力を入れている。
一方、外国人旅行者の死傷事故件数は5年間で5倍に増加しており、安全対策が十分でないことが浮き彫りになっている。事故の要因として考えられることは、日本の交通事情に不慣れであること、例えば、交通ルールの違いによる左折時の信号無視、道路標識の違いによる混乱などがあげられる。また、軽微な衝突事故などでは報告しない、フラップ式の駐車場の利用方法がわからないといったトラブルや、月極駐車場に勝手に駐車してしまい、住民からの苦情に発展するケースも発生している。
こうした事態をふまえて、政府は事故防止対策として次のような施策を打ち出している。
- レンタカー事業者や警察、観光部局と連携して、ETC2.0の急ブレーキデータ等を活用して外国人特有の事故危険箇所を特定し、ピンポイント事故対策を推進
- 日本の交通ルール等について記載したパンフレットの配布や安全運転啓発動画の放映
- 外国人が運転していることを周囲のドライバーに周知するステッカーの作成
- ドライブ支援アプリによる情報提供
- 北海道、沖縄の他、主要空港5か所にてレンタカー利用実態の調査
レンタカー事業者においても、交通ルールを周知する多言語マニュアルの作成や、外国語に対応できるスタッフを配置するなど対策を講じているが、文字が多いマニュアルは読んでもらえない、説明に時間がかかるなど、工夫と改善が求められている。
すでに一部事業者においては、注意してほしいこと、伝えたい情報について、効果的なイラストを使用したドライバーズガイドを作成、ユーザー視点に立ったサービス支援を展開している。
今後「観光先進国」を実現する上で、目標となる2020年に向けて、観光産業の底上げをはじめとするさまざまな施策が実施され、インバウンド市場拡大のための対策は加速されると考えられる。
だが、旅行者増加に伴って訪日形態も多様化する中、より実効的な安全への対策が求められていることを忘れてはならない。
以上