先人の知恵に学ぶ内部監査の必要性
[このコラムを書いたコンサルタント]
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- 専門領域
- 運輸事業、福祉事業(子育て支援)
- 役職名
- 交通リスクマネジメント部 交通リスク第一グループ 上席コンサルタント
- 執筆者名
- 梶浦 勉 Tsutomu Kajiura
2014.9.2
ISOに代表されるマネジメントシステムのコンサルティングをしていると、お客さまから内部監査に関するご意見を頂戴することが少なからずある。「内部監査は難しい」「内部監査は本当に必要か?」など表現としては様々だが、率直に言って人気がない。「内部監査を受けるのが大好き」という人は極めて稀である。
内部監査が不人気である背景を経験則で大別すると、2つの要因にまとめられる。ひとつは「内部監査に対する組織の理解が不十分であること」、もうひとつは「内部監査員の力量が不足していること」である。
後者でよく見られるのは、①訓練が不足している(被監査部署の業務を不勉強など)、②あまり適性がない人(重箱の隅をつつくのが好き、監査の目的意識が希薄など)が内部監査をしている、③その両方である。これらはコンサルティングの過程において解決策を出しやすい。訓練を重ねたり、人選を改めたりすることで解決することができる。難しいのは前者である。
組織が内部監査を十分に理解しないままマネジメントシステムの運用を進めてしまうと、内部監査の目的を見失い、形骸化し、「意味がない」「面倒くさい」「痛くもない腹を探られる」といったネガティブなイメージが組織全体に染みついてしまう。これについては、①経営トップ自らが内部監査の重要性を組織全体に説明すること、②内部監査において優良事例の吸い上げと横展開を行うこと、③内部監査による改善事例などの情報開示を徹底することで少しずつ組織の理解度を向上する必要がある。内部監査はマネジメントシステムのチェック機能であり、改善の要であることを、組織全体が認識することが重要なのである。
最もコンサルタント泣かせなご意見として「弊社のマネジメントシステムは日々監視・評価・見直しをしているので、内部監査のような年1回の儀式を実施しなくても適切に運営されている」というものがある。
確かに内部監査が儀式的な意味合いを持つことは否めない。ただ、儀式的な行為が無駄であるとは思わない。論語の一節に「礼(主に儀式の定め等)の用は和を貴しと為す。(略)小大これに由るも行われざる所あり。和を知りて和すれども礼を以てこれを節せざれば、亦た行わるべからず」とある。現代のマネジメントシステムの運用に置き換えると次のようになる。「(内部監査のような)儀式の機能としては、組織の全体最適化をすることが目的である。しかし、小事も大事もこれを目的としながら、結果として上手くいかないことがある。組織の全体最適を理解していて、組織が全体最適するように(マネジメントシステムを)運用していても、儀式をもって折目をつけていかないと上手くいかなくなる」である。この場合、全体最適とは組織が目的を達成するために最大性能を出せる調和の取れた状態と理解されたい。先人の知恵として、2500年以上前から組織の全体最適化には内部監査のような儀式をもって折目をつけることが必要であると説かれているのである。
組織の全体最適を目指していても、日々の忙しさから組織や個人が徐々に自分達の成果だけを出す“部分”最適をしてしまい、マネジメントシステムが上手く機能しなくなるということを、組織に所属する人間であれば誰もが経験していると思われる。そのような時には先人の知恵を借りて、内部監査を活用し、組織の全体最適化を図るのが良いのではないかと思う。
以上