マネジメントシステムは、「C」が命
[このコラムを書いたコンサルタント]
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- 専門領域
- 企業の防火・防災対策 ISO9001、ISO14001審査員補
- 役職名
- 大阪支店 災害・経営リスクグループ マネジャー・上席コンサルタント
- 執筆者名
- 山本 達夫 Tatsuo Yamamoto
2012.3.28
マネジメントサイクル(以降PDCAと表記)は、事業活動における生産や品質、労働安全衛生の管理業務を円滑に進める手法として、多くの企業で取り入れられている。Plan(計画)→Do(実行)→Check(検証)→Act(改善)の4つのフェーズを繰り返すことで、業務の継続的な改善を志向するものである。いずれも重要なプロセスであるが、「Check」が要であると筆者は考えている。
筆者が担当する防災調査の業務では、お客様の事業所を往訪し、火災をはじめとする各種リスクを調査、評価するとともに、事故防止・被害低減の助言をさせていただいている。さまざまな事業所を拝見させていただいていると、繰り返し対策を見直しリスクを低減していると感じることも多いが、講じた安全対策が定着せず、結果としてリスクがそのまま残ってしまっているようなケースにも出会うことがある。この違いを棚からの危険物容器の落下防止対策を例として考えてみたい。
棚からの落下防止対策において、最も多く観られる手法は棚にチェーン掛けをすることであるが、前記防災調査においてチェーンが垂れ下がった光景をしばしば目にする。工場などの事業所の多くで取り入れられている毎月の安全パトロールでも指摘されているかもしれない。このような実態が明るみに出た際、的確に検証されないとどうなるであろうか。チェーン掛けという安全対策の実行性が見直されないまま、徹底の指示が出され、暫くは励行されるが、いずれまた同じ指摘が繰り返されることになるのかも知れない。
一方、決めた手順が守られていない背景まで探求すると、根本的改善・実行性のある安全対策につながると考えている。チェーン掛けが行われないことの発見が2回3回と繰り返されると、安全対策の実行性を検証するために、現場作業者からの聴き取り調査も行われることだろう。「出し入れの度に一々危険物を置いてチェーン掛けするのは面倒だ」という不具合や苦情といった意見・要望を得るであろう。同時に「危険物を抱えて片手でチェーン掛けがされている」という不安全行動も把握できるかも知れない。そして「足踏み式で落下防止用のバーを上下させることにすれば両手を離さなくて済む」というアイデアへと発展するのではないか。そういった改善が繰り返された仕組みを実際に防災調査で見て感心したことがある。
繰り返しになるが、PDCAの「Check」においては事象だけでなくその事象が起きる原因や背景まで把握することが、継続的改善のポイントだと考える。継続的改善は目標達成を試行錯誤するプロセスでもあり、最初から正しい解答に到達する訳ではない。安全防災対策を施した後には実態を検証し、さらに効果的、効率的な方法が他にないか見直しを繰り返すことが重要であると感じている。PDCAが機能不全になっていたら、「C」がどうなっているか確認することをお勧めしたい。
以上