
第60号「太陽光発電の事故リスク」
2014.10.1
1. はじめに
太陽光発電システムは世界的に普及導入が進んでおり、2013年には全世界で3,100万kW導入され、累積が1億3,000万kWに達している。世界の太陽光発電市場は、ドイツやスペインにおける再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT:Feed-in-tariff,以下FIT制度と言う)やシステムのコスト低減によって2000年以降急激に成長した。
我が国においては、2012年7月から再生可能エネルギー電力のFIT制度が開始され、2013年度には住宅・非住宅併せて704.2万kWが導入され、累計が1,431.5万kWに達している。
太陽光発電は1974年の国家プロジェクト「サンシャイン計画」を皮切りに、官民の様々な導入・普及に向けた取組みにより、半導体技術、ガラス/樹脂/実装技術、インバータ技術、送配電技術などの素材産業から応用製品開発に至るまでいずれも日本が得意とする技術からなる重要な産業に成長を続けており、今後更なる成長が期待されている。
一方、太陽光発電システムは普及が先行しているドイツを中心に火災事故が報告されている。我が国においても火災事故が報告され、潜在的な火災リスクの低減に向けた取り組みが各方面で進められている。また、近年は想定を超える自然災害、人身災害、盗難などの事故リスクも顕在化してきている。成長産業としての育成と事故リスクの低減に向けた両輪の取り組みが重要となってきている。
本稿では太陽光発電システムに潜在する事故リスクを整理し、一般住宅、産業用施設(工場、ビルなど)、公共用施設(役所、学校、病院など)で今後新たに太陽光発電システム(出力1,000kW未満を想定)の導入を目指す方々に対して、リスク把握やリスク回避の方策を解説する。
2. 太陽光発電システムの導入状況
(1) 世界
世界の太陽光発電システム市場は、FIT制度導入やシステムコスト低減によって、2000年以降ヨーロッパを中心に急激に成長し、2012年時点でドイツが世界最大の導入国となっている。2012年の世界の太陽光発電の累積導入量は100GW以上となった(図1)。
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