レポート/資料

ESGリスクトピックス 2023年度 No.3

2023.6.1

<気候変動・自然資本>
G7首脳声明「2035年までにGHG排出60%削減」を強調、TNFDに期待示す

5月19日から21日に広島で開催されたG7首脳会合は声明を公表し、世界の温室効果ガス(GHG)排出量を2019年比で「2035年までに60%削減することの緊急性が高まっている」と強調した。また「昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)」*の採択を受けて、ネイチャー・ポジティブ経済への移行を促進・支援するとし、企業に取り組みを求めた。声明では特に今年9月に予定されている自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)**の発表に期待を示し、市場関係者、政府および規制当局が開発を支援するように強く求めている。

(参考情報:2023年5月26日付 外務省HP

<情報開示>
非財務情報の国際開示基準、「不平等」と「社会」の策定を同一組織に一本化へ

企業の非財務情報開示の国際基準で準備が進められている「不平等」と「社会」の2テーマの策定作業を同一組織に一本化することになった。不平等関連財務開示に関するタスクフォース(TIFD:Task Force on Inequality-related Financial Disclosures)の準備組織が4月13日、非財務情報(ESG)課題のうち「S(社会)」の開示フレームワークの開発を目指している社会関連財務情報開示タスクフォース(TSFD:Taskforce on Social-related Financial Disclosures)と統合することを公表した。TCFDやTNFDとの相互運用性を確保した設計を目指す。

(参考情報:2023年4月13日付 TIFD HP

<景品表示法>
景品表示法に基づく課徴金が過去最大

消費者庁は4月11日、特定企業に対して、景品表示法違反の課徴金では過去最高となる6億744万円の納付を命令した。課徴金制度が景品表示法に導入された2016年以降、課徴金納付命令の措置が取られたケースは100件以上あり、その対象は大手企業も少なくない。

景品表示法に違反する不当表示(優良誤認表示、有利誤認表示等)は、事業者側に故意や過失が無い場合でも、課徴金納付命令の措置対象となる。

(参考情報:消費者庁HP①消費者庁HP②

<サイバー>
2,000を超える不正アクセスを検知サプライチェーンリスクが浮き彫りに、IPA調査

独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)は4月25日、「令和4年度中小企業等に対するサイバー攻撃の実態調査」調査実施報告書を公表した。調査期間中、対象企業に設置したUTM*やEDR**などのセキュリティ装置から2,000を超える不正アクセスを検知、サプライチェーンの弱点を突いた攻撃の増加を裏付けた形だ。

(参考情報:2023年4月25日付 独立行政法人 情報処理推進機構HP「令和4年度中小企業等に対するサイバー攻撃の実態調査」調査実施報告書について

<危機管理広報>
スープ専門チェーン、一部で批判の離乳食の無償提供に意見公表

4月末にスープ専門チェーン店による離乳食の無償提供を開始するとの予告発表が、SNS上で賛否両論を呼び、その後の同社広報対応が称賛を集めた。従業員の不適切な顧客対応やSNSにおける公式アカウントでの発信内容が社会的非難を浴び、その後の広報対応の失敗で火に油を注ぐケースが多くある中で、企業イメージを向上させる形で事態が収束したケースは比較的珍しい。

<内部統制>
COSO、サステナ報告の信頼向上へ、内部統制「原則」の活用促すガイダンスを公表

米国のトレッドウェイ委員会支援組織委員会(COSO)が3月30日、企業のサステナビリティ開示情報の信頼性向上のため、既存の内部統制フレームワーク(ICIF)の活用を促す補助ガイダンスを公表した。

タイトルは「Achieving Effective Internal Control over Sustainable Reporting (ICSR )」。ICIFで有効な内部統制の要件として示す17の「原則」について、サステナビリティ情報開示に適用するための説明をまとめた。

(参考情報:2023年3月30日付 COSO HP

<情報開示>
国内企業の非財務情報開示が進展、IR協議会調査で判明

日本IR協議会は4月14日、第30回「IR活動の実態調査」の結果を公表した。それによると、以前の調査結果に比べて、非財務情報開示を中心に株主・投資家向け広報(IR)活動の進展があったと評価。ESGを含む非財務情報の開示では多くの企業でIR部門と他部門の連携が進む一方、統合報告書の作成で社内のリソース不足が一部企業で課題になった。また、コーポレートガバナンス・コード(CGコード)の対応状況の回答では、東京証券取引所の調査結果との隔たりも見られる。

(参考情報:2023年4月14日付 日本IR協議会HP

<ERM>
金融庁、「コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム」を提言。企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上を促す

金融庁は4月26日、「コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム」(「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」の意見書(6))を公表した。意見書では企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上を促すためのコーポレートガバナンス改革に関する現状の課題の整理、今後の取り組みに向けた施策や検討の内容を提言。

(参考情報:2023年4月26日付 金融庁HP

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