レポート

ESGリスクトピックス 2022年度 No.2

2022.5.1

今月の主なトピックス

<ハラスメント>
厚労省が就活生へのハラスメント防止策を強化、発生企業には指導の可能性も

厚生労働省は3月29日、企業の従業員による就活生へのハラスメント防止策の強化を発表した。現行で保護の対象外の就活生が被害を受ける事案の頻発が理由。ハラスメントを発生させた企業には行政指導の意向を示した。 防止策は以下の4点で構成。

  1. 大学生への出前講座を実施。就活ハラスメントの被害防止や被害を受けた際の対応を解説する
  2. 就活ハラスメントの被害を受けた学生へのヒアリング
  3. 就活セクハラを起こした企業に行政指導、ハラスメント防止方針明確化を徹底
  4. SNS等での大学生等に就活ハラスメントを周知・啓発活動
  5.   

(参考情報:2022年3月29日付厚生労働省HP

<SDGs>
中小企業の8割がSDGsを社業拡大の機会と認識せず、中小機構の調査で判明

中小企業基盤整備機構は3月1日、国内の中小企業*を対象にSDGsに対する意識や取り組み状況を調査した結果を公表した。

それによると「SDGsを経営に取り入れる目的や意義」の質問に、「企業の社会的責任」「企業イメージの向上」といった回答が約8割に上る半面、「新たな製品・サービスの強化」「取引先との関係強化」「新たな事業機会の獲得」などの 回答が2割程度に留まった。この結果から、中小企業の多くは依然、SDGsをいわゆる「社会貢献」視する傾向が根強く、自社の事業機会・利益に結びつける動機が希薄と推察される。大企業に比べて中小企業でSDGsの取り組みが 浸透しづらい一因ではないかと同機構は指摘している。

(参考情報:2022年3月1日付中小企業基盤整備機構 HP

<ESG>
国内でもサプライチェーンの人権尊重取り組み具体化の検討が始動

サプライチェーンにおける人権尊重のための業界横断的なガイドラインの策定に向けて設置した経済産業省の検討会が3月9日、初会合を開いた。企業に求める人権取り組みを具体化する検討が始動した。

会合では、ガイドラインの特性を、①国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」をはじめとする国際的スタンダードに則る②人権尊重に関する具体的な取り組み方法が分からないという企業の声に応える――とすることが明確にされた。

併せて、参加者からは、「人権の視点をビジネスモデルやコーポレートガバナンスを通して恒常的に組み入れるという人権デューデリジェンスの目的を明確化する」「人権尊重の考えをSDGsと結び付ける」 「法制度ではなくガイドラインであることの意味を明確にする」などの意見が出された。

(参考情報:2022年3月9日付経済産業省 HP

<リスク管理体制の監査>
金融庁が、「記述情報の開示の好事例集」に「監査の状況」の好事例を追加

金融庁は3月25日、今年2月に公表した「記述情報の開示の好事例集 2021」について、新たに「監査の状況」の開示の好事例を追加し、公表した。

好事例では、重点監査項目にリスク管理体制の構築状況を含めている事例や、収集したリスク情報を監査に活用している事例などが紹介されている。

内部統制やリスク管理体制の構築では、多くの企業がCOSO*が提示したフレームワークを参考にしてきた。しかしながら、そのフレームワークは、組織が内部統制やリスク管理体制の整備・運用管理に必要な構成要素や 原則が概説されているに留まり、具体的な役割や責任を誰が負うかについては、ほとんど述べられていなかった。

(参考情報:2022年3月25日付金融庁HP

<気候変動>
ISSB、気候関連開示要求事項の公開草案を公表

国際会計基準財団(IFRS財団)*の国際サステナビリティ基準審議会(International Sustainability Standards Board:ISSB)**は3月31日、サステナビリティ関連財務情報開示の「全般的な開示要求事項」と 「気候関連開示要求事項」の2つの公開草案を公表した。今回の草案はIFRS財団が昨年の11月に公表したプロトタイプをもとに作成されたもので、7月29日までパブリックコメントを募集、2022年下半期に最終基準の公表を目指すとされている。

本草案は投資家などの主要な利用者が、企業価値を評価できるような開示基準を企業に示すことを目的とし、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の4本の柱(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)をベースに検討されている。

(参考情報:2022年3月31日付IFRS HP

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