
ESGリスクトピックス 2019年度 No.8
2019.12.1
今月の主なトピックス
Environmental-環境-
<気候変動>
日立製作所、気候変動シナリオ分析の結果を公表
日立製作所は9月24日、「サステナビリティレポート2019」と「『日立環境イノベーション2050』と環境価値創出に向けた取り組み」を公表した。その中で、同社はTCFD提言*に基づき、鉄道システム、自動車関連、水システム、発電・電力ネットワーク関連、情報システム関連の5事業を対象に、2℃、4℃の2つのシナリオを想定してシナリオ分析を行った結果を紹介している。
またCO2排出削減の設備投資を促進するために、本社、100%子会社、上場子会社4社について、2019年度投資分から社内炭素価格制度を導入するとしている。
(参考情報:2019年9月24日付日立製作所HP)
<エネルギー>
中小企業などが使用電力をすべて再生可能エネルギーに置き換える枠組み「RE Action」が発足
中小企業や自治体などが、使用電力を再生可能エネルギー100%で賄うことを目指す枠組みである「再エネ100宣言REAction」が10月9日に発足した。これは大企業など消費電力が10GWh以上の企業や団体が再生可能エネルギー100%を目指す枠組みである「RE100」の中小企業版と言え、消費電力が10GWh以下の企業や団体が対象となっている。加盟企業は2050年までに使用する電力をすべて再生可能エネルギーで賄うことが求められ、毎年進捗を報告する必要がある。
(参考情報:2019年10月9日付再エネ100宣言 RE Action HP)
<サーキュラー・エコノミー>
プラスチックに関する国際イニシアティブ「New Plastics Economy Global Commitment」、初の年次報告書を発表
エレン・マッカーサー財団*および国連環境計画(UNEP)は10月23日、国際イニシアティブ「New Plastics Economy Global Commitment」の最初の年次報告書を発表した。同イニシアティブは、プラスチック廃棄物の削減や、プラスチックによる汚染の防止を目的に2018年10月に発足したものであり、400以上の企業、政府組織などが参加し、積極的な取り組みを宣言している。
本報告書では、イニシアティブに参加する176社の企業と14の政府の取り組み状況が調査された。調査により、主に以下の点が明らかとなっている。
(参考情報:2019年10月23日付エレン・マッカーサー財団 HPほか)
Social-社会-
<情報信託>
総務省と経済産業省が「情報信託機能の認定に係る指針ver2.0」を公表
経済産業省10月6日、企業等の参入意欲が高まっている情報銀行(個人情報を本人同意のもとに資産として管理・運用する民間機関)の定義や認定要件をまとめた「情報信託機能の認定に係る指針ver2.0」を公表した。2018年6月公表の同指針ver.1.0にその後の状況変化(総務省による情報銀行の実証事業や各企業における情報銀行参入検討など)などを加味。クレジットカード番号と銀行口座番号を認定対象の個人情報に追加するなど、広範な個人情報を取り扱う情報銀行の実現に向けて、踏み込んだ内容になっている。
(参考情報:2019年10月8日付経済産業省HP)
<ハラスメント>
厚労省がパワハラ防止法指針案を提示。労働弁護団は修正求め緊急声明
厚生労働省が10月21日の審議会に示したパワハラ防止法の指針案を提示した。指針案は、6つの行為類型*ごとにパワハラに該当する例・しない例を提示したもの。年内の指針策定を目指す。
一方、日本労働弁護団は同日、厚労省の指針案は「パワハラ助長につながるなど重大な問題がある」として修正を求める緊急声明を発表した。同弁護団は、「パワハラの範囲を職務上の上司部下関係に限定するなど矮小化している」や「パワハラに該当しない例の提示は企業に言い訳を与え、パワハラ助長につながる」などの問題点を挙げた。
(参考情報:2019年10月23日付同省HP)
(参考情報:2019年10月23日付日本労働弁護団HP)
<ワークライフバランス>
日本マイクロソフトが週休3日制を軸とした自社実践プロジェクトの効果測定結果を公開
日本マイクロソフトは10月31日、働き方改革に関する自社実践プロジェクト「ワークライフチョイス* チャレンジ 2019夏」の効果測定結果を公開した。同プロジェクトは、週勤4日・週休3日制等を軸とした取組であり、削減や最小化を目標とする指標群(例:就業日数)、活性化や増加を目標とする指標群(例:リモート会議実施比率)、社員の気持ちや印象を確認する指標群(例:週勤4日・週休3日制度に対する評価)の3つの観点で効果測定を行った。
(参考情報:2019年10月31日付日本マイクロソフトHP)
Governance-ガバナンス-
<ITガバナンス>
経団連、取締役向けにサイバーリスク管理の手引きを公表
日本経済団体連合会(経団連)は10月31日、取締役がサイバーリスクへの対処策検討時に考慮すべき事項を整理した「サイバーリスクハンドブック(取締役向けハンドブック)」を公表した。サイバーリスク管理のための5つの原則や取締役自身のセルフチェックリストを含む各種評価・管理ツールなどを掲載している。全米取締役協会などが作成したハンドブックの日本版。
*「環境関連の重要な機会とリスクを、企業価値向上に向け経営戦略に取り込み、企業価値にもつなげつつ環境への正の効果を生み出している企業」(本基準より)。
(参考情報:2019年10月31日付日本経済団体連合会HP)
<ガバナンス>
公正取引委員会、デジタルプラットフォーマーの取引慣行等の実態調査結果を公表
公正取引委員会は10月31日、デジタルプラットフォーム*の運営事業者と利用事業者の取引慣行の実態について、調査結果を公表した。本調査は、デジタルプラットフォームを通じた取引が急速に拡大する一方、特定の運営事業者による市場の独占・寡占や利用事業者に対する優越的な地位が生じやすいことを背景に、同市場の実態把握のため実施されたもの。
本調査結果では、市場における運営事業者の地位をふまえ、運営事業者が「取引先に不利益を与える行為」「競合事業者を排除し得る行為」「取引先の事業活動を制限し得る行為」を独占禁止法上の問題となりうるものとし、具体的な行為例を示した。
(参考情報:2019年10月31日付公正取引委員会HP)
全般・その他
<全般>
国連、SDGs達成へ民間資金の活用拡大目指し経営者ネットネットワークを立ち上げ
国連は10月16日、SDGs達成に向けた民間資金の活用拡大を目的に、「Global Investors for Sustainable Development alliance(GISD)」を立ち上げた。GISDはグローバル企業や機関投資家の経営者30人で構成。日本からは年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の水野弘道理事兼CIOが参画している。民間資金の活用拡大に向け、障壁となっている政策の変革やインセンティブ向上を目指し、今後2年間でSDGs分野への長期ファイナンスや経営資源創出を促進する手法を検討する予定。
(参考情報:2019年10月16日付UN HP)
<全般>
中央銀行の世界ネットワークが、各国中銀にESG投資を促すアピール
気候変動に関する金融リスクを検討するための中央銀行・金融当局ネットワーク(NGFS)は10月17日、各国の中央銀行に、資金運用でESG責任投資ガイダンスに基づいた投資の採用を促すアピールを発表した。具体的には、ネガティブスクリーニング(投資銘柄から除外するための基準の設定)やインパクト投資(社会的事業を行う企業や組織、ファンドへの投資)を推奨する。
(参考情報:2019年10月17日付NGFS HP)
<全般>
Climate Action 100+がレポートを発表、パリ協定との乖離に課題。
世界の主要な機関投資家で構成し、企業に温室効果ガスの排出削減を求めるClimate Action 100+が10月2日に発表した2年間の活動レポートによると、二酸化炭素排出量が多い世界161社のうち70%は、長期的な排出削減目標を策定していることが分かった。一方で、パリ協定の目標(産業革命前からの気温上昇を2度未満に抑える)と整合した削減目標を設定する企業は9%で、気候変動リスクを戦略的なビジネスリスクと捉える企業が依然少ないことも明らかになった。
(参考情報:2019年10月2日付Climate Action 100+ HP)
今月の『注目』トピックス
<ガバナンス>
政府、会社法改正案を閣議決定。取締役報酬の開示強化や社外取締役の設置義務化などが柱
(参考情報:2019年10月18日付法務省HP)
政府は10月18日、取締役報酬の開示強化や社外取締役の設置義務化などを柱とする会社法改正案を閣議決定した(11月12日に衆院で審議入り)。
本改正法案は、会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱を踏まえたもの。コーポレートガバナンスの強化を通じた企業活動や株式市場の透明性の確保を目的としており、特に次の3点は、企業におけるガバナンス関連方針や実務への影響が大きい改正項目として注目される。
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